ヒスメリア☆ドライヴァの絵日記♪

−見た目も機能も掲示板ですが、これは日記帳なのであります!−

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No.483 わたしのなつやすみ♪
NAME : めぐめぐ / TIME : 2007/09/09 (Sun) 18:10
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IMG_000483.jpg ( 29 KB ) by Upload 「お待たせ〜」

すこし遅れてお店に入る。奥行きがあり、外から見たときよりは広いように感じたがみんなはすぐに見つかった。この夜、酒盛りをしているのは私達だけだった。

「ごめんね、もう始めちゃってるよ。最初は生でいいよね?」
「いいのいいの。あ、西園寺さんの横、いい?」
「てゆーか、なーんでスーツなんだよお前は!?」
「制服好きなんだからしょーがないじゃないの」
「じゃ、そろったところで乾杯しようか」

かんぱーい!・・・おお!美味い!日本の生ビールなんて久しぶりかしら。西園寺さんに取り皿と割り箸をわけてもらいながら、思わず笑顔がこぼれた。西園寺さん・・・まーらいおん、この町に住んでいた頃は喧嘩ばっかりしてたっけ。引っ越してしまうって話が決まったときいきなり号泣されてビックリしたなーあのときは。転校してからもまめに町の様子やみんなのことを知らせてくれてたっけ。今は毘沙門駅前にブティックを経営してるとか。

「すこしは落ち着いた?」
「うん。近所の人もよくしてくれてるし大丈夫!まだ、倉庫の整理とか残ってるけど。なんかねコージがすごくしっかり者になっててビックリ」
「ふふふ、コージくんはめぐめぐの大ファンだものね」
「ぜんぜん帰ってこねーからだろ。そのうち忘れられちまうぞ」

そうかもね、とさなさなとふーたの突っ込みを受け流す。ふたりともぴーったりと寄り添ってまー、お仲のよろしいことで。そういえば、このたびの帰省は2年前の二人の結婚式のときに帰ってきたとき以来だったかな・・・。この二人がくっつくなんてね(笑) 確かふーたは実家の造り酒屋を引き継いで頑張っているらしい。あの家は結構厳しそうなのでちょっと心配していたけど、さなさなはとても幸せそうだった。

「このまま実家にもどっちゃいえばー?」
「うーん。なかなかそういうわけにもいかなくてね。もう2ヶ月も休んじゃってるし」
「お仕事のほう、大変なの?最近はほら、サテライト勤務の人も多いからてっきりめぐちゃもそういうのに切り替えるのかと思ってた。めぐちゃの所ってそういうのがなんかほら、進んでそうだし。なんだっけ?セリン?」「CERNだよwチームとはマグリッドで繋がってるから世界中どこでも一緒に作業できるんだけどね。去年の暮れからゲッチンゲンにでっかいのを建造中でさー、もうすぐ論理実験ができそうなんだよねー。もうすぐ式根島にも国産のをつくる予定があるから、そうなったら日本に戻ってくるかもね」
「ふーん、難しい話はよくわかんないけどホントめぐちゃってすごいよねー。こないだニュースで見たよ」
「あ、オレ、スナショ持ってきた」

思い出したようにふーたがカバンからスクラップバインダを取り出す。マルチ端末型の電子ペーパーのバインダにニュースのスナップショットが閉じられていた。指先でペーパー上を操作しながら拡大する。それは、今年の初めの、月の実験施設建設計画の記事だった。たしか、ウサギの餅つきについて答えた記憶がある。

「こうしてみると別人みてーだなー」
「こっちの綺麗な人は?・・・めぐめぐと同じメガネかけてるねw」
「剣森博士だよ。いい人」
「ふーん。めずらしいね。めぐちゃが人のことよくいうなんて」
「そう?工科大時代からずいぶんお世話になってるしねー」
「夏休みの宿題もやってこないような奴がよくもまあ、博士号なんかを」

夏休みの宿題、か。

ジュネーブ市内のマンションにある自室の机上にはボール紙でつくられた毘沙門市の模型が今も大切に飾られていた。私の宝物だ。

あと2年もすれば式根島の研究施設が立ち上げられる。そうすれば日本で研究を継続することが出来るだろう。マイスナーエクスプレスだとこことも数時間の距離だ。実家に居をかまえるのも、そうわるくないかもね。

ひとたびそう思うと、それはとても素敵なことのように思えた。なにか心の底にあったかさぶたのようなものが取れたような気がした。


NAME : めぐめぐ   Mozilla 1.8.1.2 / WinXP
TIME : 2007/09/09 (Sun) 18:10
 ここ数週間、実家に戻ってきいて、子供の頃よくあそんだ公園、寺町、田んぼ道、海沿いの町並み、日暮れの山を見て改めて自分がこの町が好きだということがよくわかった。そういえば、私はなぜあの日家を出る決心をしたのだろう。子供の頃は、過疎がすすむこの町を守り立ててゆきたいとなんとなく思っていた。それなのに、そんな自分は自らの意思でこの町を出てしまったのだ。お父さんはただただ、優しく私をなでてくれた。家を出た私は勉強と仕事に明け暮れ、ろくに里帰りもしなかった。たまに実家からの留守番メッセージが届く"こんどはいつ帰ってくるんだい、いっしょにカニをとりにいかないか?" なにをいってるのお父さん、今は満月だよ、満月のカニはおいしく無いよ。と思いながらも返事もしないでメッセージを消す私。

ぽた、ぽた。

「あ、あれ」

大粒の涙が溢れだすようにこぼれ落ちる。私は慌てて奥の化粧室に向かった。

父の急逝により、私はこの数週間、数年ぶりに実家に帰ってきている。
あの優しかった父はもういない。。。


 店の前で名残惜しそうにするみんなと別れて家へと向かう。そうだ、折角なので寺町を抜けてゆこう。外灯もまばらな、誰もいない夜の町はなぜか懐かしく感じられた。

「・・・うわ、ここはまだ酷いな」

 安芸大震災のあと古い町並みが残る寺町は大きく被害を受けており、住んでいた人は町の西側につくられた新しい建物へと移り住んでいた。国の中央からも程遠く復興予算もままならない過疎の田舎町で、災害から数年を経た今でも倒壊した家屋はほとんど手付かずのままになっている。ところどころ立ち入り禁止のロープが張り巡らされてて、夜はもちろん昼間ですら通る人もない。ロープをくぐりながら、なんだか、後ろめたいことをしているような、ちょっぴりドキドキするような気持ちで、昔懐かしいあの世界に足を踏み入れる。
 子供の頃の面影が残るまちの風景に、思わず懐かしさでいっぱいになりながらも、ふと思い立ち、寺町の中心部にある毘沙門さまに向かった。子供の頃、よく遊んだ神社だ。

 周囲の建物は軒並み倒壊しているにもかかわらず、川の真ん中にある神社は全く被害を受けていないようだった。実はこの島は人工の島だということを私は知っている。壊れかけた橋を渡って境内に進む。たしか、ここの欄干が・・・外れた。

「ここは、あの日のままだね」

イチョウの大木や社もそのままに。幼いころの記憶が断片的によみがえる。
私は念のため、もう一度周囲を見回し誰もいないことを確認した。だれも、いないわよね、よし。

「起きて」

 私がそう唱えると右腕にある痣のような紋様が突然光を発し始める。たちまちにして紋様の物理的な形はなくなり、輝きのなかに飲み込まれた。光そのものが実体をなしているかのようだ。そしてそれは光の柱となって私の眼前に出現しまるで魔法の杖のようにわたしの手の中に納まる。

「きょうはぶっ飛ばすわよ」

誰に言うともなく言い放って、バトンのように杖を振りかざす。足元に三つの魔法円が浮かび上がって力場を形成し、体を重力から切り離した。そして、きびすを返すと一瞬にして虚空に飛び立った。

あとには小さなサークルが三つ残されていた。

ヨーヨーの光と少女の笑い声が聞こえた気がした。

 

 
No.482 わたしの夏休み♪
NAME : めぐめぐ / TIME : 2007/09/01 (Sat) 23:03
BROWSER : Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.1; ja; rv:1.8.1.2) Gecko/20070225 lolifox/0.3.2
    
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IMG_000482.jpg ( 15 KB ) by Upload  "今夜8時、伝説の樹の下で待ってます"(ぽち)

"伝説の樹"というのは例によって"この樹の下で女の子からの告白で生まれた恋人たちは永遠に幸せになれる"とかそういう伝説が実際にあるわけでもなんでもなく、あたし達仲間内の校庭の隅にあるこの木なんの木気になる木みたいな大木のことを指し示す。ちなみに、"伝説の樹"というのはあたしが生まれた頃に流行っていた大昔のゲームに出てくるらしい。と、お父さんがいってた。

ふーたからの返事はすぐに来た。

 "宿題はみせてやんねー"

 "来ないとひどいわよていうか絶対来なさい。さもないとあんたの自転車を天池に沈めるわよ!"(ぽち)

子供の頃よく鯉を捕まえにいった池の名前がかなりリアリティをかもし出したおかげか、返事はなかった。返事なし=万事了解、というのがあたし達のルールだったりする。ケータイを机の上に放って、ぱたん!とベットの上に横になる。午後3時。部屋の壁にかけている近所の写真館のカレンダーに目をやる。万事においてマメでそつの無い妹が御丁寧に毎日過ぎた日にバツ印を書き込んでくれる。今日は、8月31日、つまり夏休みの最後の日だ。

しかし、あたしの夏はまだ終わらない。

 ちょっと早く着すぎたちゃったかな、ぼんやりと空を見上げると、きょうもすこし曇天。花火大会が過ぎてから天気があまりよくない。先日などは妹がもうずっとずっとずーっと前から楽しみにしていた皆既月食があいにくの空模様で全く見れず、替わりにあたしはくじら座の方向350光年にある「ミラ」という恒星についてのお話しを延々と聞かされる羽目になってしまった。「ミラ」という星はわりと有名な変光星(ある周期で明るさを変える星のことらしい)で、確か今年のはじめごろにすごく明るくなったとかで妹が騒いでいた星だ。その恒星は星としての寿命を終えつつあり、赤色巨星という段階にある。恒星は誕生してからばんばん燃えているわけで、やがて燃え尽きた星は膨張縮小を繰り返しながら物質を宇宙空間に撒き散らす。その物質は通常恒星の周りに「惑星状星雲」として観測されるというのだが、「ミラ」という星はその雲の部分がまるで彗星の尻尾のように伸びているらしいということが最近わかったのだという。詳しいことは結局よくわかっていないのだが、「ミラ」は秒速130キロという速度で宇宙空間を移動しており、そのために放出された物質が尾っぽのように広がっているらしい。そのしっぽの長さは3万年文の経路に相当するという。つまり3万年も前からずーっとそうやって宇宙を飛んでいるというわけだ。秒速130キロで星がつっ込んできたらやだなあ。

 出かけに見てきたあたしの部屋の机の上には夏休み初日に放り出しとときと寸分違わぬ位置におかれている宿題の沢山つまったカバンの他に、あたしの自由研究の成果であるレポートの束と、ボール紙製の毘沙門町のダイオラマが乗っかっていた。なんだかんだといいながらこの夏休みの間に一生懸命こさえてくれたのだ。とてもいいにくいが、やっぱりちゃんとお礼をしないといけないわよね・・・そ、そう、お礼よお礼。ありがとうって感謝の気持ち。あ、あ、ありがとうは、べ、べ、べ、別にあたりまえのことよね、そうよすごく普通じゃないの。と、と、と、特別な気持ちなんてちっともないわ。うんうん。 あれー、なんだか緊張してきちゃったなー、ど、どーしよう?そうだ、こういうときは体を動かしたりなんかしちゃったりすればきっと・・・


NAME : めぐめぐ   Mozilla 1.8.1.2 / WinXP
TIME : 2007/09/01 (Sat) 23:08
 「・・・なにやってんの?めぐ姉」
 「うお!!」

気合を入れるために密かにお気に入りのラジオ体操第二をしてガニマタで屈伸していたあたしはいきなり背後からふーたに声をかけられて心臓が口から飛び出しそうになった!ビックリしたあまり、思わず回し蹴りを放ってしまった。

 「イテ!いきなり何すんだよ!」
 「ご、ごめん・・・っていうか背後からいきなり声をかけるんじゃない!」
 「こんな夜中に呼び出しといてそりゃないぜ」
 「おだまり!口答えは許さないわよ!」

(ああ、ちがう!ちがうの!もう、なんてことなのよ!あたしってば)

 「ちぇ・・・。はい、これ」
 「・・・何?」
 「夏休みの宿題だよ。どうせやって無いんだろ。まったくぜんぜんちっともこれっぽっちも」
 「ふん、そうそう。最初っからそうやって素直になりなさいよね」

(ああ、ちがう!それもちがうの!もう、なんてことなのよ!あたしってば)

 「あれ?その、右腕の痣みたいなのなに?」
 「あー、これ。なんかね先週の花火でやけどでもしちゃったのかな?夜になるとぼーって光ったりするのがみょーなんだけど。なんかね、あんまりあの日のこと覚えてないの」
 「花火見てて貧血で倒れちゃうんだもんな。ん?あれ、なんかその制服。いつもと違うような・・・」
 「こ、こ、これ?私立御剣学園付属の制服よ。どう、かわいいでしょ」
 「・・・かわいいけど、どうしたの?」
 「か、買ったのよ」
 「どうして?」
 「か、かわいいからよ。ほらあたし、制服大好きだしちょー好きだし」
 「・・・ふーん。それって、コスプレ?」
 「違うわよ!違う違うぜーんぜん違う!」
 「な、なに怒ってんだよ!?」
 「もー!いーから何もいわずついてこい!ちょーっと付き合ってもらうわよ!」

あたしはふーたの手首を引っつかんで誰もいない夜の校庭をずんずんと横断し始めた。

体育館のそばにあるプールの前でふーたの手を放した。プールへの入り口は高さ2メートルほどの鉄柵にて閉ざされている。入り口付近は表通りなどから丸見えなので、側の植え込みに身を隠しながら辺りを伺う。まるでスパイにでもなった気分だ。左右の通り向うまで人の気配が無いことを十分に確認して、ふーたをふりかえり、あとついてきなさい、とつぶやいて飛び出し素早く鉄柵のうわべりをひっつかんで跳躍する。後をついてきたふーたの手をとり手早くプールサイドまで向かった。

 「・・・な、なにがはじまるんだ」
 「知ってる?夜のプールで泳ぐのってめちゃくちゃ気持ちいいぞっていう話」
 「え」

いいながらあたしはするするとタイを解き始めた。

 「お、お、おれ水着もって来てないんですけど」
 「ば、ば、ばかね!水着着てたら意味無いでしょ!」

あたしはためらいもなくブラウスをめくりあげてわざと無造作にプールサイドに放った。スカートも下ろし、パンツに手をかけるも、これは思いとどまった。さ、さ、さすがにこれはマズイわよね。
・・・や、やだ!何見つめてんのよ!そんなハトが豆鉄砲食らったみたいになってんじゃないわよ!

 「子供の頃よくいっしょにお風呂入ってたじゃない。いまさら恥ずかしがってんじゃないわよ!(っていうかあたしだって恥ずかしいんだからね!)」
 「う、あ、お」

声にならない返事とともに、意を決したのかトランクス姿になったふーたがあたしに続いてプールの中に入ってきた。

 「・・・おおー、これまじで気持ちいいかも!」
 「でしょでしょ」


NAME : めぐめぐ   Mozilla 1.8.1.2 / WinXP
TIME : 2007/09/01 (Sat) 23:09
遠くのわずかな明かりのなかで漆黒の闇のように見えていたプールのなかは意外に妙に暖かかった。夏休み毎日のように通っていたプールだけど、夜のプールはまるで別世界だった。鏡の世界があるとすれば、いまここが正にそう。しばらくプールでたゆたっているとようやく緊張がほぐれてきた、ような気がする。

 「夏休みの終りにマッパでプールなんて、さすがめぐ姉は違うなぁ!」
 「振り向いたら殺すわよ」
 「・・・はい。」
 「実は夜のプール、初めてって訳じゃないんだ。前にふーたの自転車の鍵を取りにきたの」
 「え、あれってめぐ姉が隠してたんじゃ・・・」
 「排水溝の中に落ちてたんで糸と磁石でね。夜なんで苦労したわ」
 「そのうち死ぬぜ」
 「あとね、学校の怪談に"プールの怪"ってあったでしょ」
 「うん」
 「あれね、あたしのお母さんなんだ」
 「うそ!?」
 「お母さんもね、中学の夏休みの夜にプールに忍び込んで泳いだんだって。それをね、通りすがりの人が夜にプールの水音が聞こえた!って噂になって」
 「まじかよ、さすがめぐ姉のお母さんだな!」
 「それがねそれがね、ある熱帯夜にお母さんがいつものようにプールに忍び込んだら先客がいたんだって。こっそり忍び込んでたのはお母さんだけじゃなかったんだね」
 「へぇ。まさか本当の幽霊とかそんなんは無しだぜ」
 「ばかねw 泳いでいたのは同じ学校の生徒だったの。それがあたしのお父さん」
 
あ、なんか今なら言えそうかも。
 
 「あ、あのね。自由研究手伝ってくれてどうもありがとう。ううん、自由研究だけじゃなくて、いままでいろんなバカに付き合ってくれてありがとう。すっごく楽しかったよー」
 「な、な、何をいまさらあらたまって!照れちゃうじゃん〜」
 
 「あたしね、引越しするの」
 「そーなんだ〜・・・って!何、引越し!?ええ!?うそ!」

 そうなのだ。あたしは夏休みが空けると引越しして転校することになった。正確に言うと家が引っ越すわけじゃなくてお父さんと妹はそのままで、あたしだけ他所の町に引越しをすることになった。ビックリするのとドサクサにまぎれて振り向こうとするふーたのアタマをすかさず後ろから両手で万力のように締め付けながら、今は離れて暮らしているお母さんの所へ引越しすること、お父さんには妹がいるから大丈夫なこと、お母さんはいまはお仕事で大変だけど、いい子にしてじゃましないっていうことでお母さんの側へ行くことなどを話した。お母さんはずっと子供の頃からの夢があって、あたし達姉妹が中学に上がるのをきっかけに夢を追うようにお父さんやあたし達がお母さんに夢を追っかけてもらいたくて送り出したのだ。その甲斐あってお母さんの夢は半分かなった。すこし前からこっちに来てみないかと勧められていた。

 「・・・その話はきいてたけど、絶対行かないっていってたじゃないか!」
 「そ、そうだったんだけど、なんかね、いろんな場所でいろんな経験するのもいいかなーって最近思えてきて。制服もさー、かわいいしね」
 「秋祭りとかどーすんだよ!めぐ姉がいねーとしまんねーよ!ていうか、こないだ二学期の話してたじゃん?おれら1クラスしかないけどみんなで頑張ろうね、って言ってたじゃん自分が!小さな田舎町だけど、守り立てていこうって!」
 「ご、ごめん。でも、もう決めちゃったの。自分でもね、もうビックリ!なんだかねー、今週ばたばたと」
 「そんなのねーよ、そんなの!・・・急におかしーよ!わけわかんねーよ」

 「ごめんね。わたしにも、よくわからないの」

気がつくとふーたを後ろから抱きしめていた。なんだか自分でもよくわからないのだけれど、涙が止まらない。ほんとうにどうしちゃったんだろう、あたしはあたしは。

 「・・・いつ、行くの?」
 「明日昼過ぎ」
 「・・・お、おれ待ってるから。めぐ姉が帰ってくるの、ずっとまってるからな」

その夜はいっぱいいっぱいふーたと話をした。

     ◆

こうしてあたしの毘沙門ですごす最後の夏休みは終わった。
新しい生活に向かう車窓を眺めながら、あたしは、静かに日記帳を閉じた。表紙にはちょーへたくそな字で"Nathu Note"って書いてある。あたしの失われたひと夏とともに、おそらく一生開かれることはないだろう。

窓の向うには入道雲が見えた。それは真っ直ぐ空に向かってのびていた。

 

 
No.481 わたしの夏休み♪
NAME : めぐめぐ / TIME : 2007/08/28 (Tue) 01:17
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IMG_000481.jpg ( 31 KB ) by Upload 「ごめんねー。浴衣じゃなくって♪」

 先に花火大会の場所に来ていたふーたたちと合流したわたしたちは差し入れのジュースとビニールシート等が入った荷物を渡して縁日回りを始めようとしていた。さなさながしきりに浴衣の件をふーたにあやまっていたのにはちょっと理由があったりするのだけれど、また"文字数が多すぎます!"と起こられちゃったりするので、その辺は割愛割愛。
 まだ花火までには時間があるというのに、ここ的場花壇はすごい人で賑わっていた。こんなにどこから人が来るのだろうというくらいに。駐車場も大きくなく、とすればここにいる人はみな歩いてか自転車で来ているのであろうか。

「臨時列車とかでてるみたいだよ」

ふーたの傍らにいたメガネくんが教えてくれる。流石に一時間に一本しか走らない電車では都合が悪い。ちなみに彼あたしの日記には初登場だけれど、メガネくんもあたしたちの友達仲間で同級生だ。登場回数が少ない、というかほとんど無いのは大人の事情と察してくださいw

的場花壇は、毘沙門市にある海水浴場だ。海水浴場とはいっても、娯楽場・運動場・旅館を備えた古くからある複合的な施設でその歴史は大正時代に遡る。当時とある個人が私財を投じて建設したもので、その昔は一大リゾートとして賑わっていたと聞く。大正ロマンの漂う古めかしい旅館街に、屋台村のように道の両脇に並ぶ遊技場、その向うはそのまま海水浴場となっており、海の家や浜焼きの出店が立ち並ぶ。南国チックな木とかもあってマーライオンでも建てておきたいくらいだ。もっとも、当時の華やかな面影は今はほとんどなく、一部の施設を残してその他は町の幽霊スポットと化している。
 それでも、この花火大会の日には道いっぱいに出店が立ち並び、スマートボールやら射的やら、輪投げなど当時から残る遊技場も店を開けて、往年の賑わいを見せていた。
ふーたの実家も地元の有志として花火に出資しており出店を出したりもしているので、そのお手伝いで先んじてこの場に来ているという訳だった。

「ねーねーみんなであれ観ない?」
「・・・あ、あれですか(^^;)」

縁日を見て回るあたしたちへ、メガネくんが指差したその先には"ちょー恐怖!てゆーかFBIに捉われた金星ガニを超極秘公開なんですが何か!!(一人300円)"と銘打たれた見世物小屋の天幕があった。表にはアタマの大きなミュータントがC字型の鍵つめで人間の首を絞めている絵が描かれている。あやしさ大爆発というかなんというか、超極秘で公開ってどいういことよ!?ってゆーかその看板はメタルーナ昆虫人じゃない!宇宙水爆戦じゃない!B級なめるな!なーんてつっ込みを入れるとメガネくんのスイッチが入ってしまうので、ここは我慢我慢。

「・・・っていうか入るの?」
「え、怖いの?」
「・・・い、いや。いやいやいやーん♪」

・・・やばい、あたし今、目がきらきらしてるかも、やばいかも。
見るからにあやしいロイド眼鏡のサーカス団長のようなもぎりにお金を支払って天幕の中に入る。中はすっごく薄暗くて音の割れたスピーカーから"みょんみょんみょん"とかいう殺人光線みたいな音とか、"ぎゃー!""どっくんどっくん"とか、雰囲気満点の効果音垂れ流しになってますが何か。

「よーこそ!我が研究室へ!低脳なる猿どもよ!」

必要以上にいかめしい檻にシートが被せてあり、傲慢なそれっぽい○○○○科学者が天幕内の人に説明を始める。薀蓄に続いて檻の中の金星ガニをチラ見せし、博士が実験と称してうら若い露出度の高い女性のアシスタント(金星人という設定らしい)を檻の中に投下、なぜか興奮した金星ガニが暴れだし女性を襲いついには檻が壊れて観客が逃げ出すというストーリィ(これ子供むきじゃないでしょw)だったが、この金星ガニの出来がいい。素晴らしいアーマチュアで実際あのハリボテよりも本物っぽいんじゃなかろうか。

「うわー!びっくりした!」

みんなとぜんぜん違う感想を持っているあたしはさておき、あわてて飛び出してきたみんなはふと顔を見合わせて笑った。

花火の時間も近づいてきたので、浜辺の手ごろな場所に持ってきたビニールシートを敷いてみんなで座る。的場花壇の縁日や旅館街の辺りはあんなに人で溢れかえっているというのに、この砂浜に陣取っている人はまばらだ。今日は花火大会だっていうのにねw


NAME : めぐめぐ   Mozilla 1.8.1.2 / WinXP
TIME : 2007/08/28 (Tue) 01:19
「タコヤキ買ってきたよ。食べよー」
「・・・あ、ああ」
「ん!?ふーたってばなにぼーってしてるんだか・・・さては、さっきの金星ガニのところのおねーさんのことでも考えてたんでしょ。すっごいボインボインだったしぃー。。。もぉいやらしい!」
「ば、ばか!な、な、な、何いってるんだよ」
「あんたにはボインボインなんて十年早いわ!」

いいながら手にしたタコヤキを二つねじ込んでやった。

ヒュルルルルルルルル〜     ドンッ!

あたしが馬乗りになってふーたの口にタコヤキをねじ込んでいると最初の花火が上がった。

毘沙門の花火大会は(他はどうなのか知らないけれど)すごいと思う。場所が場所だけにぜんぜん有名ではないけれど、一時間は絶え間なく花火が上がり続ける。みんなが"昇り竜"と呼ぶ螺旋を描いて打ち上げられるラストの花火などは特に圧巻だ。打ち上げられはじめた花火であたりは昼間のように明るくなり、赤、青、紫、白、黄色などの見目に華やかな光と音が乱舞する。浜辺は打ち合げ場所のすぐ近くなので、たまに火の粉が降ってくる。そういうのも大好きだ。

「きれい〜」
「今年もまたすごいね」
「・・・私たちだけでみてるの、もったいないわね」

そうなのだ。この浜辺から見るのが一番の眺めだというのに、私たちの周囲にはちらほらとしか人がいない。中には見知った顔もある。まぁのんびり見れるのでいいか。・・・いや。いやいや、この違和感。なんだろう・・・

「うわぁ、今の近い〜!」
「花火どこから打ち上げてるんだろう?」
「的場山の頂上から打ち上げてるらしいよ」

的場山・・・山の頂上にはたしか、高灯篭があったはず。江戸時代には港を示すための灯台として機能してたけど今は使われていない。そういえば、その側に古い神社があったっけ。神社・・・そう、確か確か・・・なんてったっけ、そう確か

「三鬼神社!」
「え、何?」
「ごめん、用事思い出した!」

あたしは走り出していた。的場山に向かって。

旅館街に向けてのびる道を真っ直ぐ抜けた所に駐車場へ向かう道と交差するように小さな山道がある。それが的場山に通じる山道であった。
それにしても、気が付くと旅館街はもとより縁日や催し物会場は驚くほど閑散としていた。花火は夜空を七色に染め上げているが、そこにはそれを見上げるべき人影も無く、まるで、そうまるで    のお祭り。

"花火打ち上げ 危険!立ち入り禁止"

山道の入り口にはロープが張られていた。しかしそんなもの躊躇いもせず跳ね上げて先へと進む。的場山の頂上で花火の打ち上げ?あんな樹木が密集した場所で花火の打ち上げなんかできるものか。なんで、どうして、どうしてだれも不思議に思わないんだろう、感じないんだろう。そして、あたしはあたしは。

あたしは何をしているんだろう。

あたまがぼんやりとする。ぼんやりしてすぐに自分が何をしているのか忘れそうだ。しかし、忘れない。忘れてあげない。

藪に囲まれた山道を進むと、古い石段を登る道が現れた。見上げると九十九折となった坂道の先に神社が見え、ぼんやりと明かりが見える。どこかで見たことがあるような、ないようなそんな景色。
息を整えながら、一つづつ石段を登ってゆく。確かに、確かにその山の頂上から花火は打ち上げられていた。あたりは舞い落ちる火の粉でさながら雪山を歩いているようであった。しかし、この火の粉はちっとも熱くなかった。むしろ冷たい。

最後の一段を昇り、古い神社の最初の鳥居をくぐる。そしてそこにあの少女がいた。


NAME : めぐめぐ   Mozilla 1.8.1.2 / WinXP
TIME : 2007/08/28 (Tue) 01:19
きっとこれは夢だ。あたしはそう思った。

神社の境内には数十メートルはあろうかという八・・・いや九つほどの光の大蛇がもつれ合い、のたうっていた。そしてその口から絶え間なく虚空に向かって火の玉を放っている・・・それは花火だった。
その光の大蛇の周囲には(おそらく的場花壇からここへ登って来た人たちであろう)無数の人々が溢れかえっており、人々は次々と大蛇の光の体に飲み込まれてゆくように見えた。

その光の大蛇に少女は跨っていた。少女に操られるかのように大蛇がのたうっている。

「・・・おねえちゃん」
「ごめんね、来ちゃったよ。ちゃんとさよならって言いたくて」
「・・・」
「あんたは、今夜帰っちゃうんだ」

コクリ。

「・・・オニがくるから」
「ら、来年もまた来るよね?すっごい夕立といっしょに来るよね!そしたらまた、」
「・・・それは無理。記憶には残らないから。憶えていようとすれば、町には居られない」
「どうして?」
「・・・そういう呪い(まじない)なの」

いつしか大蛇の周りに溢れていた人影は無くなり、いよいよその大蛇が一匹、また一匹とほつれてゆっくりと天を向く。そぞろに螺旋を描きながら。

「・・・もう行くから」

まって!・・・少女に向かって駆け出そうとした瞬間あたしは見えない壁に阻まれたように推し戻される。鳥居の向うに抜けられない!

「・・・最後の鳥居からこっちへは来れない」
「ま、待って!・・・こ、これ!」

あたしは急いでポケットの中のものを差し出した。それはあの宝物のヨーヨーだった。右手を少女に向かって真っ直ぐ差し伸ばす。

「・・・勝負、ついてない」
「今度会うときまでの貸しにしといたげる」
「・・・今度は、ない。だから」
「だから?」

わたしの宝物をあげる・・・

少女の顔が、少女のその顔があたしの消された記憶から一瞬蘇る。

「お、お姉ちゃん!」

あたしがそう叫ぶと同時に、少女の跨った大蛇がひときわ大きな光を発して一瞬膨れ上がったかと思うともの凄いスピードで天に昇っていった。
すごく綺麗で力強い"昇り竜"だった。

 思い出した。幼い頃、あの神社で転がった鞠を追っかけてわたしの替わりに川に落ちたのは、あれはあたしのお姉ちゃんだった・・・
 呆然とその場で立ち尽くすあたしの幼い記憶をかき消してゆくように最後の火の粉はいつまでもいつまでも降り続く・・・ただ、他の火の粉と違いそれはとても暖かかった。

毘沙門の花火大会は終わった。それは町の人にとって、夏の終りを告げるイベントであった。

 

 
No.480 私の夏休み♪
NAME : めぐめぐ / TIME : 2007/08/27 (Mon) 01:53
BROWSER : Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.1; ja; rv:1.8.1.2) Gecko/20070225 lolifox/0.3.2
    
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IMG_000480.jpg ( 62 KB ) by Upload 晩御飯を食べに駅前食堂にいった。

 なぜかというと今日は妹がいないのである。(こんな時期に、と思うけど)天文部の合宿とかで学校に泊り込むそうだ。あたしも混ぜて混ぜて!と懇願したが妹に土下座された。
土下座までされたら、さすがにこっそり学校に忍び込んで乱入するとかいう楽しいプランを実行に移すわけにもいかず、泣く泣く妹を見送ることにした。
この日はあいにくお父さんも急な出張が入って家を空けることになり、隣のさなさなは親戚の家にお泊りとかで留守。図らずも年端も行かぬうら若き乙女が一人ぼっちになってしまうという由々しき事態となってしまったが、誰も心配するものもなくというわけ。

 駅前食堂はその名の通り毘沙門駅前にある昭和の匂いぷんぷんの古い食堂だ。ラーメン屋やお好み焼き屋と違い、町で定食が食べられる数少ないお店でもある。地酒の古めかしいネオン管もくすけているが、マイカーやエアコンもなかった時代にはこの駅前のネオン管が人々の繁栄の象徴だったと、亡くなったおじいちゃんがよくゆってた。お仕事からの帰りに駅から降り立ちここで晩ご飯にありつく労働者も少なくなかっただろう。しかし今はつぶれていないのが不思議である。
 おじいちゃんおばあちゃんが二人で切り盛りしているお店。店に入るなり、おばあちゃんと「めぐちゃん今日は一人なん?」「そうなんよーきいてきいて!」と世間話。小さな町だと知り合いばっかりで困っちゃうよねw
揚巻タマゴをオマケしてもらった焼き魚定食を食べながら、ぼんやりと壁にかかった花火大会のポスターを見る。そうだ、今週末は花火大会だっけ。花火大会、ずーっと昔は毘沙門さまのお祭りの直後に花火をあげていたものだったが、いつごろからはわからないけど祭りと時期が分かれてしまって、8月の最後の週末に催されるようになったと聞く。なので、この町の人にとっては毘沙門さまは夏の始まり、花火大会は夏の終りというイメージがある。花火大会といってもちょっとした出店が出たりもする。もちろんみんなと一緒に回る約束だ。
 そういえば、あの子はどうしているかなー。
毎晩のように神社に行っているけど、お盆に親戚の家に行って帰って来てからは夜の神社にあの子の姿はなかった。なんとなく「お盆がすぎちゃったからかな」なーんて思ってたりして。でも、ちゃんとさよならいえなかったので心が残るなぁ。

そういえば、お醤油頼まれてたんだっけ。

 夕闇の中、醤油の空き瓶を風呂敷に包み自転車のかごに載せてお醤油をもらいに近所の造り酒屋まで向かう、というかふーたんちのお店なのだけれど。
 お酒をつくるのがもちろん本業なのだけれど、沢山ある蔵の一つを使って昔から醤油を造ってもいる。昔ながらの手作りの方法を受け継ぎ、木樽により2年間大豆と小麦をじっくりと熟成させた本物のお醤油だ。毘沙門市のおいしい水と海から取れる甘塩を使って酒樽で作るここのお醤油があたしは大好き。西日本ではいわゆる"淡口"が主流だけど、あたしはだんぜんここの"こいくち"派だ。
 はずかしい話だけど、あたしはこの醤油がないと天ぷらやお刺身が美味しく食べられないのだ。小さな頃に親戚の家などでおよばれしたときなども、お醤油の味が違っていて、ほとんどお料理を食べれなかったりした。
こだわりの一品。量造っているわけじゃないので一般には流通しないけれど、うちはお酒を買い付けているお得意さんのよしみもあって"特吟"を卸してもらっている。

 醤油を受け取った帰り、もと来た寺町、古い町並みの路地を行く。外灯も少ないので辺りが薄暗い。流石に人影もないなー、って思ってたら、路地の辻から小さな子供が車輪ころがしをしながら飛び出してきた。あたしも小さい頃よくやったっけ。同時に何輪まで転がせるかとか。

懐かしいかな。

 何気なく車輪を転がすその姿が面白くってついつい子供のあとを追って自転車を進める。あれ、こんな所に曲がり角あったっけ・・・。
 気が付くと障子格子が並ぶ見慣れない路地にいた。物心つく頃から朝から晩まで遊びまわって隅から隅まで知り尽くしている小さな町なのだけれど、ここはどの通りかしら?それとも新しく路が出来たのかな。それにしてはふっるい町並みよねー。

 辺りは日も暮れて、暗くなり始める。家屋を見ると障子の向うにぼんやりと明かりが灯り、人影が写りこんでいる。帯を締め着物を着ていると思われる女の子の影が障子の向うでまりつきを始めていた。


NAME : めぐめぐ   Mozilla 1.8.1.2 / WinXP
TIME : 2007/08/27 (Mon) 01:54
 ごんごらえ ごんごらえ
 ごんごろ屋敷のお姫さん
 十三で親がのうて奉公して奉公すんだら京へいて
 京の土産に何もろた
 もったい一把に帯びしめに
 誰にやろもて もろて来た
 お静にやろもうて もろて来た
 お静は早く死んだげな
 お静の墓は何番か 三番よ
 これで一丁かしまーしたー

なんとなく、かすかに憶えがあるような、すごく小さい頃に遊んだ手まり唄。
あれはいったい何時の記憶なのだろう?たしか・・・。たしか大きな木がある場所でだれかに手まり唄を教わっている自分。そして、鞠が転がりそれを追っかけるようにして、それからそれから・・・うーん思い出せん。
なんだかとても大切なことのように思えるんだけど。

なんだか寂しくなってきたので、そろそろ戻ろうかと引き返そうとするが、来た道が見当たらない。

仕方なく路地を先に進むが、暫く町並みを進むと建物の並びは切れて終りとなり、路地の寸止まりの先が山道になってて、どういうわけか石段を登る道になっている。見上げると九十九折となった坂道の先に神社が見え、ぼんやりと明かりが見える。

なに、なによこれ・・・。

なんとなく、どこかで見たことがあるようなないようなそんな景色。

いいようのない想いに駆られて石段を進む。鼓動が早まり、だんだんと神社の鳥居が近づいてくる。光はその神社の向うから漏れてくるようだ。そして、あたしはあたしは。

「・・・こっちへきてはだめ」

神社の鳥居の前にあの子がたっていた。

「あんた。居なくなっちゃったのかと思ったじゃない!」
「・・・お盆を過ぎると、あの神社には入れない」
「そう、なんだ・・・でも、よかった。こうしてまた会えて」

 あたしあんたに渡したいものが・・・

「・・・こっちへきてはだめ」
「?」
「・・・花火の夜、三鬼神社に」

何か言おうと口を開きかけたその瞬間はっとなって目が覚めた。気が付くとあたしは、家の近くの路地突き当たりにある胡堂の石段に腰掛けていた。どうやら居眠りをしていたらしい。
ちょっと疲れてるのかなぁ・・・って今みた夢の内容を思い出そうとしたけど、それはまるで指先から砂がこぼれ落ちるかのように、つかもうとするたびにどこかに消えてしまった。

ふえっくしょん!

だ、だれも見ていなかったわよね。

乙女にあるまじき大きなクシャミを内心恥じながらも家路を急ぐ。いつしか熱気が和らぎ、虫の音が賑やかになっている。
すこしだけ夏の終りの到来を予感した。

 

 
No.479 わたしの夏休み♪
NAME : めぐめぐ / TIME : 2007/08/26 (Sun) 17:01
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IMG_000479.jpg ( 46 KB ) by Upload ちりん、ちり〜ん♪

あたしたちの町では、毎年夏になるとラムネ屋さんがやってくる、涼しげな風鈴の音色とともに。

ラムネ屋さんとは・・・えーと、ラムネを売り歩く商人・・・そのまんまだ。リアカーを改造したような小さな屋根つきの屋台を大きな自転車で引っぱってゆっくりと町を巡回する。荷台にはドデカイ透明な氷を浮かせた箱にラムネを詰めて。話は逸れるけど、小さい頃自転車も買ってもらえなかった(正確にはお下がりの子供用自転車はアクロバットしてて完全にスクラップになってしまった)あたしは、ちょうどこのリアカーを引くような古めかしい大きな自転車を愛車としていた。鉄板の荷台に、手を挟んでしまいそうな物々しいバネがむき出しの大人のオモチャのようなお尻が痛そうなサドル。流石にペダルに脚が届かないので三角乗りしてたっけw

プールからの帰り、さなさなと一緒に一本80円のラムネを飲みそんなことを考えながら、あたしはふと唐突に疑問に撃たれた!

「・・・不思議だ」
「え、なにがなにが?・・・ラムネはレモネードがなまったって話?」
「え?そんな話してた?」
「してたわよ。ラムネは大企業じゃ作れないように規制がかかってるとか、そんな話してたわよ」
「そうだっけ。いや、それよりもあの"ラムネ屋"よ!やっぱり不思議だわ」
「夏には必ずいるじゃない」
「そうなんだけど、よく考えたら変じゃない?毘沙門市って人口は減る一方でしょ。駅前のシャッター通りをはじめ、昼間でも出歩く人もまばらなゴーストタウンじゃない!それなのにどうしてあんな昔ながらの行商人が商売成り立ってるわけ?」
「・・・うーん、ゴーストタウンは言いすぎかな(^^;)でも、確かに。あ、ほら、副業かもよ。ラムネ屋は趣味とか」
「つけてみよう」

なんで今まで疑問に思わなかったんだろう。あたしってば迂闊だわ。
気付かれないようにすこし間を空け、ラムネ屋の風鈴の音を頼りに尾行を開始した。

ラムネ屋は学校の前を通り過ぎて寺町のほうに向かう。午後の日差しが石畳の路をあぶり、ゆらゆらと陽炎が舞いその向うに麦藁帽子をかぶったラムネ屋のおっちゃんの漕ぐ自転車が揺らぐ。どこかに卸したりするのだろうか?

「・・・あ、今誰か、ラムネ買った!」
「えー、よく見えなかったけど」
「うーん、人がいるように見えるんだけど」
「陽炎が揺らいでよくみえないよー」

寺町までの一本道は田んぼの真ん中を突っ切っているので、あんまり近くには寄れない。寺町に入ったらもう少し距離を詰めよう。
先ほど誰かいたと思った地点まで来てみたがこんな何もないところ。小さな道祖神がぽつんとあるだけで、それらしい人影もなかった。

「うーん、暑いよう・・・」
「がまんだ我慢!ザブングルは男の子!でしょ」
「わたしは女の子ですー」

寺町に入るとようやく庇の陰もあり、さらに、距離を詰めることもできる。江戸時代から残る古い町並みには日陰も多く涼しげな色合いと木と土で出来た建物がかもし出す古めかしさとあいまって気持ちひんやりとしているような錯覚を憶える。風鈴の音が近い。うあ、汗が目に。・・・あ、いつの間に!?
ふと見ると、誰か二人組がラムネを買っていた。

「みた!?どっから出てきたのかな・・・」
「え、なにが?」
「なにがって、あのふたり・・・あれ?」

振り返るとラムネ屋の周囲から二人組が消えていた。

「いまさっき、だれかがラムネ買ってたっしょ!二人!」
「えー、見なかったけどなー」
「も!しっかり見ててよね」
「うー、見てたんだけどなー」
「・・・次は見逃さないでよ」


NAME : めぐめぐ   Mozilla 1.8.1.2 / WinXP
TIME : 2007/08/26 (Sun) 17:01
その後30分近くにわたってあたしたちのラムネ屋尾行劇は続いた。しかし、なぜか気がつくと客が来ておりまた何処かへと去ってしまう。しかも、さなさなはことごとくそれを見逃してしまうという漫画みたいな展開が続いた。・・・これはどういうことよ!

「・・・これはどういうことよ」
「うー、こっちが聞きたいんですけど。もしかしてわたしめぐめぐにだまされてる?また、なにかの遊び?あ、わかったふーた君とグルね♪そうでしょ」
「なんでそこでふーたなのよ」

「もう一度ラムネを買いにいきましょ。そんときにあたしらが買ったときより箱のラムネが減ってたら、あたしのいうこと信じて」
「うんうん♪・・・ふーたくんどこかな。はやくみつけてあげないとかわいそうよね」
「いや、それ違うから」

へんな勘違いをしているさなさなをつれて、ラムネ屋に追いつく。
首にかけた手ぬぐいで汗をぬぐいながら自転車をとめたおっちゃんが荷台の蓋を開けてラムネを取り出した。

「ほら!こ〜んなに減ってるでしょ」

あたしは手にしたラムネ瓶をさなさなに差し出す。そしてそして−−−。

「え、なにがなにが?・・・ラムネはレモネードがなまったって話?」

「・・・え?そんな話してた?」
「してたわよ。ラムネは大企業じゃ作れないように規制がかかってるとか、そんな話してたわよ」
「そうだっけ・・・そうだったわね。そうなのよ、そもそもラムネって謎なのよー。明治時代に長崎の・・・」

ちりん、ちり〜ん♪

あたしたちの町では、毎年夏になるとラムネ屋さんがやってくる、涼しげな風鈴の音色とともに。

 

 
No.478 私の夏休み♪
NAME : めぐめぐ / TIME : 2007/08/21 (Tue) 00:17
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IMG_000478.jpg ( 64 KB ) by Upload ざぶ、ざぶざぶ、ざぶざぶざぶ・・・

新月の夜、真っ暗な夜の闇の中であたしはバケツを抱えて河川を渡河していた。流石に制服ではないけれど、てゆーかスク水に上だけセーラー服ですが何か?
別に渡河訓練をしているわけでもなんでもなくて、手にしたバケツからはガサガサと時折音がしているわけで。
大河ドラマにもちょっぴり出てきた戦国武将のお墓が境内にあるという古い神社の近くにある川で月もない真っ暗いさなか、黙々と川底の石をひっくり返すお父さんとその後ろをバケツを持って付いて歩くわたしなのです。

「かにだ。かに分が足りない・・・」

話は昼間に遡る。

 お父さんがお盆休みに入って我が家は毎年恒例のお墓参り、里帰りで田舎に帰ることになった。田舎へ里帰り、といってもドラマや漫画によく出てくるように飛行機や電車で何時間も移動とかそんなのではなくて、車で30分かそこらにある、父の生家つまり本家への里帰り。車で30分といっても、同じ毘沙門市で頑張れば自転車でもいけちゃう、そんな田舎です。とはいっても、あたし達の住む毘沙門市内ですらかなりの田舎なのだけれど、ここ上賀茂町はもうね、絵に描いたような田舎であり、国道からすこしはなれた山間の谷間のようなトコロに小さな川が流れていてその周辺にちらほらと民家が並び、猫の額のような平野部に田んぼが並んで見渡す限り山と緑の世界だったりする。町の、というか村の学校もあるが、生徒よりも先生の数のほうが多いとか、そんなところである。しかし、近年この谷にダムを建設するとかで村全体が湖の底に沈んでしまうとかそんな話を伯母さんが話しているのを聞いたりもした。

 子供の遊ぶような娯楽もない本当に山奥だったりするが、逆に考えれば何をしてもかまわないというところでもある。電線も遮蔽物もほとんどないためお正月の凧揚げなどはもちろん、A級ライトプレーンに嵌っていた時などはよく飛ばしに来ていたものだ。そうそう、ライトプレーンってつくったことある?あの図面どおりに竹肥後を曲げるのって面白いよね!あとさ和紙で翼を貼ったあとに霧吹きをかけたら翼がピンと貼ってちょっと感動しちゃった!ワインダーで撒くとすごく飛ぶよね!調子に乗ってB級やティニープレーンにも手を出したけど、時間とお金が続かないよね!よね!w・・・ごめん、横道に逸れちゃったね。
 谷間を流れる川は田んぼに水を引くために何段にも堰が設けられていて、そこに水が溜まっているものだから小さい頃はよく妹と泳いで遊んだりもした。河で泳ぐのって、今思うとプールとも海とも違ってすっごくファンタジックだよね。そのまま用水路とかにもぐりこんだり、入り組んだ水路がちょっとした迷路みたいで、ぜんぜん違うけどカリオストロの城の地下水路みたいで楽しかったかも。
 あとは、実家の納屋の二階にもぐりこんでおままごと遊びとかよくしたかも。蔵の中は冬でもひんやりとしてて、あとなんだかよくわからないふるい骨董品が沢山あって遊んでいて飽きなかったな。納めてあった竹馬を持ち出してマスターしたのもここでだっけ。小4の時ケンケンを練習していて壊してしまったけれど、今ではあたしが高校になっても乗れそうな丈の高い丈夫なのを伯父さんが用意してくれている。河も渡れるようになったし。
 そんな思い出いっぱいの実家に暫く泊り込むことになってる訳だけど(妹はもちろん街中よりももっと星空が見えるということでノリノリなわけで)、夕食の前に突然「カニが食べたい」と言い出し、こうして近所の河に繰り出す羽目になったりしていた。お父さんがいうにはなんでも「新月の晩はカニも身が太ってて美味しい」のだそうだ。月夜の晩にはカニは自分の影に怯えて身を細らせるという。ほんとかなー?

「おっと!・・・よっしゃ!めぐバケツ」
「あいよー」
「ほら、これぐらいの岩の下にもぐってるのが手ごろな大きさなんだ。こうして両脇を脚で囲って岩をひっくり返すと飛び出してくるから、それを後ろから、こう!な!こう!やってみ!な!」
「・・・あたしに教えてどうするつもりよ」
「ノリわるいな」

狙っているのはズガニ、いわゆるモクズガニである。よく、お父さんが蛸釣りに行くさいに、近くのドブ川でえさとなるベンケイガニ採取を命ぜられているあたしとしては、この展開は避けなければならない。といってもズガニはあたしの好物でもあるのだが。うーん、のせられているんかな、あたし。

田舎の家に帰ると、妹が茹でたとうもろこしを持って迎えてくれた。実家に帰っても妹は自然に家事をこなしている。伯母さんの受けもいい。ていうか、あたしの評価は最悪なのだけれどw
母がいなくなってから2年になるけど、この子の家事遂行能力の進歩は刮目に値するなー。正直妹がいないとこまるよなー、ていうか一生いて欲しいかも。


NAME : めぐめぐ   Mozilla 1.8.1.2 / WinXP
TIME : 2007/08/21 (Tue) 00:17
お風呂に入ってさっぱりしたあたしはとうもろこしを縁側にもってきて外を眺める。夏休み、思えばいろいろなことがあったな。7月の終りにはみんなで無人島にキャンプにいって一日中海で泳いだり、ふーたのお父さん達と河川敷でバーベキューとかしたり、夜花火したり、大阪に一泊旅行に出かけてペルシャ文明展を見たりデパートのレストランで食事したり大きな本屋にいったり、妹の希望で生まれて初めてプラネタリウムに行ったり、お盆の夜中にはふーたを海につれて行ったり、それからそれから・・・そうだ、日記書かないと。

「・・・ズガニは水から茹でるんだ。鍋から逃げ出さないようにしっかり蓋をして」

台所から、かさがさと暴れるズガニたちを前にそんなお父さんの指導と、こればっかりはきゃーきゃーと騒ぐ妹の声を聴きながら、プツプツととうもろこしの粒にかぶりつく。明日はダムの底に沈むとかいう集落を見に行ってみよう。・・・あ!美味しいかも。ていうか、美味しい〜♪

あの子にも食べさせてあげたいな。

気が付くとあたりは涼しげな風に包まれてスズムシの音が心地よく響いていた。

 

 
No.477 私の夏休み♪
NAME : めぐめぐ / TIME : 2007/08/19 (Sun) 21:22
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IMG_000477.jpg ( 40 KB ) by Upload スイフト・タットル彗星。
 今から100年以上も前にアメリカの天文学者が発見した彗星である。名前は当時彗星を発見した全く別の二人の天文学者から名づけられており、周期133年の回帰彗星である。彗星というと千年女王しか思い浮かばないあたしと違って妹はこの手のネタに詳しい(ネタじゃありません!(妹))。回帰が確認されたのは1992年のことで日本のコメット・ハンターによって再発見されたこの彗星は同年以降もりあがっている(らしい)有名な流星群の母天体とされる。それがペルセウス座γ流星群だ。流星の正体は宇宙空間にさまよう砂粒ほどの天体であり、これが大気との摩擦で発火する現象である。スイフト・タットル彗星の通過する軌道(ダストトレイルとか言う)と地球が毎年決まった時期に交差しその結果、決まった時期地球に彗星の破片が降り注ぐというわけだ。ちなみに、地上から流星を観測すると天体のある一点を中心に放射状に星が流れるように見えるが、この点をとくに「輻射点」と呼んで、その近くにある恒星の名前をとって、○○流星群と呼ばれているらしい。普通に考えると星は日周運動をしているのだから、輻射点も変わるのではと思うのだが、この輻射点も日周運動をするらしい。というか、星光視差で躓いているあたしにとってその辺は厳しい。ペルセウスはメデューサを退治したギリシア神話の英雄であり、γ星は英雄の左肩あたりに位置しアルゲニブとも呼ばれる。アルゲニブといえば「馬の翼」という意味もあるらしいが、メデューサの首から生まれたのはペガサスだったか。流星群の極大は8月13日の未明、つまり今夜。今年は新月と重なるので観測には最適でーす。

しかし、そんなこととあたしのプチ家出はまったく関係がなかった。

 月が真っ暗なので夜道がとてつもなく暗い。あのオヤジひょっとしたら、いまごろ家に怒鳴り込んできているかもしれない。
まあ、裏山では池に火薬を増量したロケット花火を打ち込んで魚を取ったり、竹の子や椎茸を取ったりして怒鳴り込まれたりしたこともあるのでいまさら竹林の一つや二つどうということもないのだろうけど。
それよりも、あたしには飛び出してきたときの妹の表情がメデューサに思えてならない。そうだ、これからは鏡を手にして、映った妹と話をしよう、そうしよう。あ、流星見っけ♪

妹は今夜はたぶん寝ないで星空を眺めているだろうから、どんなに遅くなっても閉じ出される心配もない。流星のひとつふたつも見つければ機嫌もよくなるであろ。そう思うと漕ぎ出したペダルも心なしか軽くなり、いつものように毘沙門神社へと向かった。

「・・・」

いつものように側道の欄干を外して神社の裏手に入り込むと、そこにはあのお祭りの夜に見た少女が立ち無言でこちらを見ていた。

じつはみんなには内緒にしているのだが、あの晩からあたしは毎夜のように神社に出かけている。なぜだかはわからないが、どうにもあの少女のことが気になって、夜になると自然と神社に足が向いてしまう。そしてそこに必ずあの少女が自分を待っていた。・・・自分を?そう、きっとあたしを、だ。

「いるわねー。今日は何をして遊ぼうか」
「・・・」
「ねぇねぇ、"天国と地獄"って知ってる?」

静かに首を横に振る少女を前にスカートのポケットからびー玉を取り出したあたしは、境内の裏の地面に穴を掘り出す・・・ていうか、子供の頃つくったのがまだあるわね。

「こっちが天、こっちが地の穴で右がエルフで左がドワーフよ。真ん中がコモン界。そいでね、このビー球をね・・・」

天国と地獄(Verめぐ)のルールを説明しながら無表情で熱心に耳を傾ける少女をみる。不思議な子。ビー球遊びもしたことがないのだろうか?やはり都会から遊びに来たどこかの親戚の子供なのだろうか?
どうしていつもこんな夜中にこんな場所にいるのだろうか?しかし、そんな疑問に一切答えてくれようとはしない。そして、こうして毎晩少女と二人でいろいろな遊びを教えながら夜のひと時を過す。


NAME : めぐめぐ   Mozilla 1.8.1.2 / WinXP
TIME : 2007/08/19 (Sun) 21:24
「・・・じゃあ、まずためしね。ビー球をはじいてごらん」
「・・・」
「だめだめよ。そんなお上品じゃビー玉は飛ばないわよ。ほら」

あたしはしゃがみこんだ少女に覆いかぶさるように無い胸をぐいぐい押し付ける。手を取ってひとさし指と親指のあいだにビー玉をねじ込んではじいてみせた。勢いよく飛んでゆくびーどろの玉を不思議そうに見つめる少女。

「わかった?あと、勢いだけじゃだめよ。コントロールも大切。小指をね、こう、地面につけて支点にするといいよ」
「・・・。」
「ほら。艦載砲の要領で。回転を加えるともっと安定するよ・・・そうそう、うまいうまい」
「・・・♪」
「あとはね、こうして滑りやすいように指先をしゃぶってね。"ねぶりかん"っていうんだけど。あ、これは3回までだよ飛びすぎるかんね」
「・・・!」

すっかりコツをつかんだのか、少女の指先で神社の灯火を照り返し小さく輝くびーどろの玉は自在な軌道を描いて放たれるようになった。この子、筋がいいかも。

「じゃあ、はじめよっか!・・・そうね、あたしはこれを賭けるわ」
「・・・?」
「そっか。・・・うーんとね、ビー球遊びっていうのは各自の宝物を賭けて勝負する遊びなのよ。そうやってみんなからお宝を巻き上げ・・・じゃなかった、素敵なものをみんなで共有するっていうシステムなのよ」

 そういってスカートの中からヨーヨーを取り出す。透明なスケルトン構造のヨーヨー。しかしこれはただのヨーヨーではない。硬質アクリルを町工場のNC旋盤を使って削りだしてつくったあたし自作の特製ヨーヨーだ。遠心四点巻バネ式の手作りセンサと3つのLED、二種類のキセノン管を組み込んであり、縦横の動き加減によって変幻自在に明滅する。あたしの自慢の宝物の一つである。
 スナップを利かせてヨーヨーを振り下ろしたのち世界一周をして見せ、そのままムーサンサルト。ストリングを引っ張るとキセノン管がストロボのようにあたりを照らし出した。少女の目が輝く。

「・・・すごい」
「どう?勝負する?宝物がなければお小遣いでもいいのよ♪」

LEDをちかちかさせたままスリーパーしてるヨーヨーめぐスペシャルにすっかり目が釘付け状態な少女は、すっと手を後ろにまわして何かを取り出した。一見するとそれは払い串のようであった。

「それがあんたの宝物ね・・・ってそれ何?」
「・・・起きて」

少女がそう唱えると払い串のようなものが突然光を発し始めた。たちまち物理的な形はなくなり、輝きのなかに飲み込まれる光そのものが実体をなしているようだ。・・・しかしこれはいったいなんなのよ。輝くトラペゾへドロン?・・・とにかくっ!

「りょ、了解!始めるわよ。三本勝負」

よほどヨーヨーが気に入ったのか、いつにも増してこの子の熱の入りよう、っていうか表情は無表情なんだけど、そこがまたかわいいかも♪


NAME : めぐめぐ   Mozilla 1.8.1.2 / WinXP
TIME : 2007/08/19 (Sun) 21:24
 別段手を抜いたわけでもないのだけれど、勝負は一対一のまま、最終ラウンドに。そして、その最終局面。復路のエルフホールでオヒメサマの玉を捉えたあたしはそのまま行って帰ってでゴールしようとしていた。そのショットの最中、うう、なんかもの凄いオーラ感じるんですけど。
 あ、しまった!チョコやっちゃった!このあたしとしたことが!痛恨。
※チョコる=ビー玉を打つ際に相手の玉と接触したまま止まってしまうというペナルティ。チョコったほうは近くの穴に眠りとなり、相手に起こされるまでとばされるというルール。

少女から安堵の空気が流れて、すぐに緊張の空気が流れ始める。見ると無言のまま緊張していた。気のせいか動きがギクシャクしているかも。

「・・・はは、おちついておちついて。大丈夫だから」
「・・・おねえちゃんの大切なもの、が欲しい」

少女の瞳が朱に輝いていた。そして目を瞑る。するとどういうカラクリか、手も触れていない少女のビー玉が七色に輝き虚空に浮かびあがった。
軽く瞳を閉じるのを合図にしたように弾けるように浮かんだビー玉が動き出す。もの凄いスピードで、左右の穴を往復しあっという間に天を超えて真ん中の穴にまるで流星のように吸い込まれていった。カチンというビー玉のぶつかりあう音がしてあたしの玉がはじき出され、なんとその玉が地の穴に吸い込まれる。え、っていうか、これってあたしの勝ちじゃん!

「・・・あ」

一瞬二人の間に気不味い空気が流れた。心なしか少女の肩が小刻みに震えているように見えたりなんかしちゃったりして。

「も、もう!だ、だめよ手を使わなくちゃ!反則よ〜!」

・・・な、泣いちゃいそうかも。

「さあさあ、今日の遊びはこの辺でお終いにしましょ。今の勝負はナシってことで」
「・・・!?もう一回」
「だめだめ。さっきみたいなのを食らったらあたし、また倒れちゃいそうだもの。それに、そろそろオニがやってくるんでしょ」
「・・・う」
「ふふふ、でも、勝負はお預けねー。安心して!そのときまでこれはちゃーんと取っといてあげるから、ね」

手にしたヨーヨーをかざして見せてにっこり笑いかけた。あ、ちょっと機嫌直ったかも。

「・・・約束」
「うん、約束だ」

小指を突き出してきたので、あたしも小指を絡ませる。
手を振ってあたしは神社を後にした。
出入り口でもう一度振り返って神社の裏手を見たけれど、そこにはもうあの少女の姿はなかった。

ただただ、虚空に流星が流れていた。

 

 
No.476 わたしの夏休み♪
NAME : めぐめぐ / TIME : 2007/08/19 (Sun) 16:04
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IMG_000476.jpg ( 53 KB ) by Upload 暑い。てゆーか、暑すぎる。

ここ数日続く真夏日によって流石のあたしもとけちゃいそうです。

もうね暑さが最高潮に続いているので、思い立って流しそうめんすることにした。「素麺流し」でも可。床の間に大の字に寝転がってスカートをぱたぱたしていた身も蓋もないあたしはそう思い立つなりシュタッ!って感じで立ち上がり、倉庫からのこぎりと鉈を持って裏山の竹林に入って、手早く手ごろな竹を切り倒す。邪魔になるので枝はその場で切り落としその辺にほうった。誰の山か、だって?そんなことあたしが知るかっ!

「なにやってんの!?めぐ姉ェ〜」

庭先で、汗をぬぐいながら手ごろな長さにカットした竹を手際よく縦に割っていると、携帯ゲーム機を手にした近所のがきんちょどもが興味深そうによってくる。

「楽しぃこと〜♪」
「わかった、青だけふみだ!」
「・・・違うわよ。っていうか渋いわね」
「マイ竹刀でも作るんか?」
「・・・しばくわよ」

細い木を組み合わせて支柱にし、その上にウォータースライダーをデザインしてゆく。へへへ、ここRね♪あとは、器と箸かな。竹の器なんてオツでしょでしょ。

「さー、あんた達片付け手伝ってちょうーだい。あと、こーじは夕方までに他のみんなを集めてきて!美味しいものたべさしたげる」
「うん、わかった!」

こういうのは大勢でやらないと意味がない。あたしの日頃の躾がよいのか(恐れられてるのか?)、弾けるようにその辺の木屑を集めだすがきんちょたち。うんうん、かわいいよかわいいよ♪

「・・・お姉、な、なにやってんの?」

がきんちょどもが興味深そうに見つめる中、井戸水をキコキコポンプでくみ上げて竹樋に流しては微調整に余念のないあたしの元に、買い物に出かけていた妹が自転車に乗って帰ってきた。

「ってわけで、今晩はそうめんにするから。決めたから。流すから」
「え!?」
「もうすぐみんなも集まってくるから。準備お願いねw」
「ええええ〜〜〜〜〜っ!!?」

結局、出汁や具、ちょっとした添え物とか素麺の準備、果てはポンプをくみ上げて樋に流し続けるなどの大切なミッションをすべて妹に託したあたしは、集まってきた"ななしき"のみんなにお手製の竹の器と竹箸を渡す。気が付くとさなさなも手伝ってくれている。

「さぁて、のこのこと集まってきたわね、がきんちょども!」
「これ、流しそうめんっていうんだって」
「ぼく、漫画でみたことあるよ」
「すげー、これめぐ姉がつくったの!?」
「へへーん、そうだよ!ものどもー並べ並べ!すぐに素麺を流してやるからすくって食べてみてみー」

妹を促し、ザルにあげられた素麺を示すあたし。

「えーとえーと、今日はね三つの素麺を用意しましたー♪まずは小豆島手延そうめん「島の光」だよー。小豆島の手延べそうめんはねー、400年前にお伊勢参りの帰りに三輪によった小豆島の人が素麺造りの技術を学んで広めたものなんだよ。絶妙な塩加減と胡麻油の独特の風味がたまらないよねぇ〜♪」

「うわ、うまく取れないよ〜」
「こっちにも〜」
「冷たくて美味しい〜」
「飛び出してるよ!〜めぐ姉」

「・・・続いては最古の素麺、1200年の歴史をもつ大神神社の三輪そうめんは「土蔵囲い」だよー。知ってる知ってる?そうめんはねー弘法大師、空海が唐より持ち帰った技術なんだよ。三輪そうめんは冬にしか生産しないことでも知られてるけど、やっぱり元祖だねぇ。「虫食い素麺」ってよく言うけど寝かせた素麺のこのコシを味わってよね、ってゆうか美味しいぃ〜!」

「出汁とって」
「こっちも」
「あ、ずりーよ!」
「だってだってそっちばっかり!」

「・・・最後はやっぱりこれだよね。播州龍野の手延べ素麺「揖保乃糸」。そんななかでも、今日は幻のそうめんといわれる「三神」を用意してみました!なんといってもこの細さ!説明不要なこのノド越しを御賞味するがいいわ!」

「わいの、わいのや!わいの!」
「一人二切れづつだっていってたでしょう、ちゃーんと数えてあるんだから」
「お代わりまだー」
「勝負〜!」

−−−そしてヒグラシが鳴いていた。


NAME : めぐめぐ   Mozilla 1.8.1.2 / WinXP
TIME : 2007/08/19 (Sun) 16:04
「西瓜切った」

がきんちょどもが引き上げて後片付けもひと段落し、縁側でさなさなと呆けていると、妹が西瓜をもって現れそばに腰掛ける。

「ありがとー」
「えーと、さなえちゃんも今日はたいへんでしたねー」
「いやいやいつものことだからー(^^;)」
「(しゃく)ほや、夏休みも半分は終わっひゃったね」
「(しゃくしゃく)ひょーゆーひょきは、みゃだ半分あるってひゅーのよ」
「(しゃくしゃく)ひょっか」
「(しゃく・・・ぷっ)・・・みんな喜んでたね、素麺。ところでなんで素麺流しなわけ?」
「夏だしね、流れる素麺でしょやっぱ」
「(しゃくしゃく)(^^;)」
「そういえば、ちいさいころにはよくお母さんが素麺流しやってくれたよねー」
「(しゃくしゃくしゃく)ひょうねー」
「ふふ、お母さんがね、勝手に裏山の竹を切ってきたもんだから、よく奥のおじいちゃんが家に怒鳴り込んできてたっけ(笑)」
「(しゃくしゃく)ひょうらったかなー」
「そうだよ。よくお父さんがお菓子もって謝りに行ってたじゃん」
「(しゃく・・・)・・・」
「・・・」
「・・・そういえば、今日の竹ってどこから・・・って、ちょっとお姉!どこいくの!ま、まて!」

暫くプチ家出します。

 

 
No.475 わたしの夏休み♪
NAME : めぐめぐ / TIME : 2007/08/13 (Mon) 01:54
BROWSER : Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.1; ja; rv:1.8.1.2) Gecko/20070225 lolifox/0.3.2
    
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IMG_000475.jpg ( 28 KB ) by Upload 朝起きたら家に誰もいなかった。

妹はまた畑に行っているのだろうか。屋根を伝ってさなさなの部屋を覗くがそこにも誰もいない。ふと気が付くとあたりは妙に静まり返っており、ただただ蝉の鳴き声だけが聴こえている。冷蔵庫の食べかけのショートケーキや、戸棚のお菓子もそのままに、ほんのちょっとした用事で出かけてしまっているかみたいに、まるで、たった一人あたしを残して全世界の人間がどこかに行ってしまったかのように。下駄履きの日常がある日を境に突然とその姿を変えてしまう!亀を助けたのが太郎一人ではなく村人全員が、世界全体に異変が起きたのだとしたら、あたしはあたしは・・・。

そんなふうに、台所で途方にくれているとメール着信で携帯がなった。

ぽち。

"おはよーめぐめぐ。どうしたのー?せんせーカンカンよw"

ガバーッ!って感じで階段を二段とばしで二階に駆け上がり、慌てて妹の宝物であるアポクロマート屈折を取り出して窓の向うに見える学校に向ける。んもぉ、こんなときセオドライト(経緯儀)なら楽なのにな!ドキドキしながら必死に接眼を覗くあたしの視野の向うで沢山の同級生が廊下を往来している姿が目に入る。(ノ∇`)あちゃー
そうなのだ。今日は8月6日、登校日なのだった。

あたしが生まれた地域は戦時中核戦争が行われたという歴史的事実がある。その所為かどうかはわからないが、夏休みにもかかわらず子供の頃からその日は登校日と決まっていた。登校日といっても、炎天下の元で校長先生の長い話を聞かされ、その後講堂で悲惨極まりないドキュメンタリー映像を鑑賞し、感想文を書いたりする。学校のみならず、この時期夜を徹して戦時中の悲惨な映像がTV放送されたり、学校の廊下などには戦禍の生々しい写真(きっとトラウマになるであろう)などが大量に張り出され、ちょっとした資料館のような状態だ。おかげで核の知識もハンパではなくマンハッタン計画やトリニティ実験はもとより爆縮レンズの製造方法や核シェルターが備えるべき機能、とりわけカーニーポンプを自作する技術など、核戦争を生きるためのあらゆる知識を子供のころから叩き込まれている。最初の弐週間をいかに過すかがポイントだ。亡くなったひいおばあちゃんから、その日のこともいろいろ聞いたりもした。畑仕事をしていたら、遠くの空が光って、暫くして青空がだんだんと曇ってゆき、雨が降ったとかゆってた。黒い雨だった。
全然話は違うが、小学校のころ大きな山火事があった。家からは何十キロも離れていたのだけれど、一日中空から灰が降ってきてびっくりした。きっとそんな感じなんだろう。。。

しかし、そんなことと登校日をすっぽかしたこととは何の関係もなかった。


"ううう、なんかね、もうね。もンのぉ凄くお腹痛かったりしてもうぜんぜんだめぽ。ていうことでせんせーによろなのです" ぽち(送信中・・・)

 子猫のアイコンがメールをせっせと運んでいるアニメーションを眺めながら、あたしはあたしは・・・。そーだ、せっかくなのだから普段出来ないことをしてやれ!と開き直って設置したアポクロマート屈折を覗き込む。へぇ、ホントによく見えるもんね!さすがに妹が大事にしているだけあって、なかなかの解像度。この距離でも、人の形がなんとなくわかるよー。えーとえーと、あたしのクラスは2階だからこの辺かな。あ、あれだ。わわわ、先生だなあの派手なポニーテールは!・・・これから講堂に移動するんだな。いやーご苦労ご苦労・・・。
 そうしてひとしきり学校のあちこちをピーピーングトムするうちに、不思議なものが視野に入ってきた。学校の屋上に女の子の人影を見つけたのだ。ちっちゃい子だなーサボりかなーでも制服が違うような・・・フェンスに持たれて気のせいかこっちのほうを見ているように見える。なんだか面白くなって手を振ってみた。すると、

「!!!」

 驚いたことに接眼レンズの向うの女の子が手を振っている。慌てて望遠鏡から目を離して学校を見たけど、もちろん肉眼で人影が見えるはずもなく、もう一度望遠鏡を覗くと屋上の人影はどこを探しても見つけられなかった。ま、いいけど。


NAME : めぐめぐ   Mozilla 1.8.1.2 / WinXP
TIME : 2007/08/13 (Mon) 01:55
 結局その日は、午前中どこにも遊びに行くことも出来ず、おとなしく家で揖保の糸を湯掻いて食べたりした。めんつゆにその場でおろした生姜と庭で取った紫蘇の葉っぱを入れると格段に美味しくて、三把もたべちゃった。午後のシエスタとしゃれ込んでいると変な夢を見て目を醒ます。暑さのせいもあるけど、汗びっしょり。女の子制服姿で白いシャツと下着が汗びっしょりなの。起きてみるとどんな夢の内容だったか、上手く思い出せない。なんか、古い時代の、閉鎖的なある村の入り口の小屋でよそ者が入ってくるのを見張ってて、たまたま自分が当番のときによそ者が村に入ってきて、村の習わしに従ってその客人を当番していたものがもてなすとか、そんなの。
 時計を見ると午後を回ってて、そろそろ学校も終わる頃だった。妹たちが帰ってくるのをこうして迎えるのもなんだかシャクなので思い切って外に出ることにする。そうだ、久しぶりに崖場のほうにいってみようかな・・・などと考えながらBMXに跨って繰り出した。

「すっかり遅くなっちゃったな♪」

気が付くとあたりは日も暮れてしだいに夕闇が舞い降りてきていた。あたしは帰路の途中、手ごろな縁石を見つけてはジャンプを繰り返しながら眼下に広がる小さな町、毘沙門市を見下ろす。あたしたちがお化け煙突とよぶ、一本だけ立っている工場の大きな煙突が見えた。この煙突はおそらくこの町のどこにいても必ず目に入る唯一の建造物だとおもう。夕闇のなかでなんだか懐かしく思って、そういえば、夏休みに入って初めてずっと一人で過した一日だったことに気が付いた。ほぼ毎日のようにさなさなやふーたたちと遊んでいるわけで、ずっとずっとこんな毎日が続けばいいと思っているけど、そうもいってられないんだろうなぁ。
 なんとなくあたしと車輪は自然と毘沙門神社に向かっていた。

 いつものように側道の欄干を外して神社の裏手に入り込む。そして、やっぱりというかなんというか。そこにはあのお祭りの夜に見た少女が立ってこちらを見ていた。

 

 
No.474 わたしの夏休み♪
NAME : めぐめぐ / TIME : 2007/08/12 (Sun) 14:35
BROWSER : Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.1; ja; rv:1.8.1.2) Gecko/20070225 lolifox/0.3.2
    
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IMG_000474.jpg ( 63 KB ) by Upload "おはようございま〜す!主人サマ!てゆーか、いっこくかんで待ってるお" ぽち(送信中・・・)

"いっこくかん"というのは例によって地名でもなんでもなく、私達の間では私立図書館を指して使われるコードネームだ。この図書館は古い町並みが続く寺町の一角にあり明治時代から残る歴史ある建物が一部に使われている。江戸の時代に商業で栄えたこの街からはその豊かさと東西南北の海陸交易の要所として情報が集中し文化が成長する土壌があった(今は見る影もないケド)。その文化人達が開いた郷塾がこの図書館のある場所であり、学問の場として栄えていたこの地に残るこの建物が今では市立の図書館の別館として機能している。(現在の建物は明治の火事にて建て替えられたもの)
このモダンな感じがする建物に付随する形で近代的な鉄筋の図書館が併設されており、かつては夏休みともなれば子供たちで溢れかえっている感もあったらしいのだが、深刻な過疎に直面しているこの毘沙門市の図書館では静まり返った駅前通と並んで静かなスポットの一つだ。っていうか賑やかなところなどないが。。。

「おはようめぐちゃ。あら、今日は妹さんと一緒じゃないのね。そうそう、この間の本入庫したよ。取ってあるから今日借りて帰るよね?」
「さいきんあの子はこもりがちでして〜。あ、これ返却です」

メール発信に遡ること2時間前、すでにここに来ていたあたしはいつもの司書のおねーさんと挨拶していた。勉強なんかは全然だけど小さな頃から本が大好きだったわたしは休みになるとよくここに来ては一日中本を読んでいた。ていうかエアコンがフル稼働している所為も大きいけど。お母さんの事もあってか、図書館の人たちとも面識のあるわたしはここではちょっとした常連さんだ。

「ホント、めぐちゃはおかーさんに似てるよね〜。あの人もよく休みの日はここに来てたから・・・」
「あははははは、はぁ。・・・あのあの、今日は奥の部屋にこもります」

あたしの顔を通り越して遠い目になっているおねーさんをそのままにして二階の奥の部屋に向かう。そう、ここにはお母さんが寄贈した文庫があった。。。


「きたよーめぐめーぐ!・・・ていうか、何してんのー」
「まぁ、そこにかけ給え」
「台風すごかったね〜。でもたいした事なくてよかったよ。ていうか台風過ぎてからなんか暑さましてない?」
「・・・ん」

サングラスをかけてテーブルの上に肘を立て顎の下で両の手を組んで渋くキメていたあたしだったが、結局誰もつっ込まなかったので心中寂しく思いながらも静かにサングラスを外してテーブルに置いた。・・・寝てるのかっ!ふーた!?

「み、みんなそろったわね。こほん」
「・・・んが」

うとうとしているふーたに消しゴムを投げつけながら、軽く咳払いをし・・・やばい、あたし今、目がきらきらしてるかも、やばいかも。キラリン☆レボリューション!

「8月になったわね」
「・・・」
「7月にはお祭りやプール、海と新鮮なイベント目白押しでワクワク感満点なのだけれど、8月に入ると夏休みもマンネリ化に入る、とおもうの。暑さも目新しさ〜!ってゆー期間を越えちゃって、ただただ暑くて暑くて。ともすれば、だらだらとした日々を送ってしまいがちな8月!家の中でも涼しい場所を求めて、うろうろする猫とともに、廊下の隅っことか、脱衣場とかにごろごろと移動して一日を過しちゃいそうな、そんな8月!」
「・・・(それはアンタだ)・・・」
「そんな日々にしちゃだめだわ!だめなのだわ!8月!というわけで、今日はみんなでわたしの夏休みの自由研究をやろうってわけ!どう!?素敵でしょう」
「・・・(^^;)」
「・・・」
「異議なし!?異議なしね♪じゃーさ、じゃーさ、聞いて聞いて!」


NAME : めぐめぐ   Mozilla 1.8.1.2 / WinXP
TIME : 2007/08/12 (Sun) 14:38
 その後、ランチミーティング形式であたしは二人に夏休みの自由研究のプランを説明した。この夏の自由研究は"わが町のミステリスポットを暴け!"副題として"完全解明!街のタブー(袋とじ)"としている。
 簡単にいうとこの毘沙門市にある怪奇ゾーンや心霊スポットを多角的に研究するという内容だ。例えば、プールで昔溺れ死んだ子供の霊とか、大昔に座敷牢に閉じ込められた人の幽霊とかそういう街に流布するこわーい話を網羅し、かつその謎に迫る、具体的にはそれぞれについての情報をインタビューや学校、市の記録から調べて細かな矛盾点に訴求したり、元になっているエピソードや歴史的事実およびその時代背景に迫るという内容だ。
 すでにプールの怪については27年前の元学校教師からそのときの学校の状況や事実、また話のバリエーション例やその派生原因の考察など下調べの済んでいるネタもあった。学校のプールの施工や受発注過程に関するヤヴァイネタもあるのだけれど。

「うそ!それ本当!?ていうかほんとすごいよねめぐめぐ」
「構成はこんな感じ。まず、@ミステリーを列挙 → A怪異の事実、情報、裏づけを列挙し類推 → B別観点で類似のケースを全国から探して → C解決編。真実はこうだった! → Dただし、そういう検証からどうしてもカラクリの見えない怪異が残る、それが真のミステリ〜 って感じ」
「この、袋とじ企画はなんなんだよ?」
「あ、これはね、"それやっちゃいけないよ〜"っていうタブーをね実験した話をレポするの。ほら、お盆の夜に海で泳ぐと脚を引っ張り込まれるってあの話を実際にやってみてどうなったかとか」
「・・・なかなかチャレンジャーだね」
「あ、みんなにも手伝ってもらうからね」
「・・・」
「ディスプレィも考えたんだ!精巧な毘沙門市のディオラマをつくるの。そこにミステリスポットをマーカーする。3段構成になってて地形を過去に遡れるの。ほら、火の見櫓の怪ってあるでしょ、あの場所は江戸時代には海だった場所なんよ。なので、後世の作り話なんだけど、そんなのを視覚的に見せたいの!」
「・・・だれに」
「ディオラマはボール紙で作るの!等高線の書かれた精密地図をコピーして等高線の形に何枚も切り抜いて張り合わせる。ほら、なんとかって漫画でもやってたあれ。あれをね、ふーたがつくるの!」
「ちょっとマテ」
「他にはね、紙面に描くカットなんかもね、ふーたに・・・」

 さんざんみんなと自由研究の内容について議論したおかげで随分と紙面の構成や企画、アクションプランが明確になったよ。タスクを並べてスケジューリングし、現実的にするためにタスクをあらかじめ決めておいた優先度に従って取捨選択する。遊びの予定も含めてだいたい現実的な線が見えてきたかな。あとは何部つくるかだなぁ・・・ってだんだん何をしているのかがわからなくなってきちゃったな。

「・・・っとこんなところかな・・・うーんあとはなんかこうインパクトがねぇ」
「インパクト?」
「必要か!?必要なんか!?インパクトが夏休みの自由研究に!?あぁあ!?」

既に専属アシスタント契約が確立しているふーたが目を血走らせる。そんなに怒るなよな、きっといいことあるからさー。

「やっぱり気になるのよねぇ。あのお祭りの日の」

 そう、それは前日の毘沙門さまのお祭りの日の夜に神社の裏手で出会った少女のことだ。さなさなもふーたも見てはいないがあたしは確かに見た。その子に触れた瞬間あたしは意識を失っていたらしい。時間の消失というやつだ。それはそれで怪異なのだが、その後、手をつくして(小学校や中学校のクラス写真を入手し)調査した結果この街の住人でないこともなんとなくわかった。夏休みの間遊びに来ている子供ということも考えられるだろうが、そんなよそ者があの場所を見つけられるだろうか。。

「そもそも不思議なのよね。思わない?」
「なにがなにが?」
「毘沙門さまよ。お祭りの夜すごい人出だったじゃない?」
「・・・いつものことじゃない」
「考えてもみなさいよね。毘沙門神社のロの字両側の100メートル道路に人がびっしりよ。1メートル幅に10人と見積もっても3000人近くの人間がいたことになる。町民がすでに1万人を切りそうなこの町でいったいどこからあれだけの人出が」

安芸の小京都と呼ばれるちっぽけな町が夏の一夜だけ異世界の住人で埋め尽くされる変な想像をする。


NAME : めぐめぐ   Mozilla 1.8.1.2 / WinXP
TIME : 2007/08/12 (Sun) 14:39
「・・・うーん、観光客とか、帰省した人とかそんな感じじゃない?毎年あんな感じだし」
「そーかなー、でもやっぱりなんか変よ。観光客がくるようなお祭りでもないし。・・・ていうか、だれも不思議に思わないのが不思議だわ」
「めぐめぐもいままで不思議に思ってなかったんじゃない?」
「そーなんよ。それも不思議だわ」

 そーなのだ。自分でもなぜ今のような疑問が浮かんできたのか。そして一度考えてみればそれは至極当たり前の疑問であり、こうして説明の付かない事態に発展している。そしてそれはなんとなくだが、あの少女に関係しているような気がする、漫画的には。

「"こおりおに"いっていってたのよね、その子。調べてみたの。どうも"鬼ごっこ"の一つみたいで、鬼に触られたら凍ったように止まってないといけないみたい。鬼以外の人に触られたら'解凍'されて動き出せるんだけど、これってあの夜の状況に似てる」
「じゃあ、鬼ごっこで悲運の最期を遂げた幽霊なんかじゃね?ひひひ」
「残念ながらそんな事件はあの神社にはないのよね〜♪」
「・・・その子が鬼ってことかな・・・」
「日本的な怪異ってこと?違うよ〜たぶん。気になったから"鬼ごっこ"って調べてみたの。聞いて聞いて!」

やばい、あたし今、目がきらきらしてるかも、やばいかもwきゃぴりん☆キック!

「"鬼ごっこ"の起源にはいろいろと説があるけど、これといった定説もないわ。つまり不明!民俗学者の柳田國男なんかは追儺の神事を子供たちが真似て遊びにしたなんていう文献を残しているけど、これもどうかな?」
「追儺の神事?」
「追儺。もともとは昔に中国から伝わってきた習俗で、旧暦の大晦日に疫病などをもたらす悪い鬼を払う宮中行事だったらしいわ。「続日本紀」には文武天皇の慶雲三年(706)に宮中で初めて営まれたことが記録されてる。・・・706年といえば元明天皇が平城京に都を移すすこし前のことね。遷都は疫病や災厄からみのこともあるから、そういう世相だったのね」
「それって節分の元になったっていうあれ?」
「豆まきの風習は別の起源があるという説が定説になってるわね。豆を撒くというのは「魔」を「滅」っするとかけてるとか。今日の節分はこのふたつが混ざり合っているというのが正しそうだけれど。とにかく、追儺ってのは、ヨーロッパのドラゴンスレイヤーと一緒でさ、世の中の災厄を権力者が追い払うというかそういうセレモニーで、鬼がみんなを追いかけたり追い回したりする時点で、違うんじゃないかって」
「他にはね、「子をとろ子とろ」っていうのが始まりっていう説もあるの。戦前ぐらいまでは「ことろ」っていうのが鬼ごっこの名称としてよばれていたってのもあるんだけれど・・・」

『日本遊戯史』っていう本にその遊びについて書かれている。

 鬼:子をとろ〜 子とろ〜♪ どの子をとーろ〜♪
 親:○○ちゃをとってみ〜♪ とれるもんならとってみ〜♪

 先頭の子が親になってみんながムカデつなぎになって、鬼に対峙して鬼につかまれないようにする遊びで、最初に親と鬼が次のような問答歌を交わしムカデがバラけないように鬼が追っかけたり親が邪魔したりする遊びだ。この様な遊びはさらに「子取り歌」という系統に遡る。古くは平安時代の比比丘女(ひふくめ)という遊びがそれで、さらにその謂れとしては中国のある仏話があるが、もう完全に文字数をオーバーしているので割愛する。

「へー、「花いちもんめ」みたいやね。昔からある遊びって考えてみると不思議ね」
「鬼ごっこっていうのは日本独自のあそびでもないんよ。アメリカにはタグゲームって遊びがあって鬼=タッガーでほとんど一緒だし、フランスでは猫、シャっていうらしいけれど猫とねずみのおっかけっこ。」
「ふんふん」
「クロアチアでは「鬼ごっこ」は「プン・スパッス(自己の開放)」っていって、鬼のことを「クカロ(探す人)」っていったりするし、キツネとハンターっていうのもあるから、必ずしも鬼っていう怪物の概念は共通のものじゃないみたい。日本古来のものというよりは人類共通の遊びと考えたほうがしっくり来るのかも。鬼ごっこっていうのはなんなんだろう?」
「・・・なにが言いたいんだ」
「鬼ごっこっていうのは、鬼の交代という契機こそが遊びの核心だって思う。役割、目的がくるくると変わることでものの見方が正反対になるということをこの遊びは教えてくれる。安全地帯は鬼にとっては嫌なものだしね・・・あの子はそういう昔からのなんとかとか幽霊とかそういうんじゃないような気がする。そんな気がするだけ」

日が暮れ始めて図書館を出たあたし達は、近所のお菓子屋さんで買ったアイスケーキを公園のブランコで食べながらあたりがすっかり暗くなるまでそんな話を延々と続けていた。ヒグラシが鳴いていた。

 


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