充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。3つめはともかく、と前置きがあり1,2についてお仕事の状況に当てはめての引用だったのだけれどそういう遊び心って楽しい。たとえ"無理無理っていうな"といわれているにしても、だ。
話は変わって、いまやコンピュータのプロセッサは物理的な限界を迎えつつある。プロセス技術の理的限界と光の速度の限界がそれで、処理速度を高速にすればするほど消費電力は跳ね上がり、トレンドは高周波からマルチコアにシフトしている。マルチコアといってもソフトウェアがマルチコア化して高速に演算できるプログラムである必要があるわけで、OSが実現するハイパースレッディングのような形のものであるわけだ。こうした限界の見えてきたシリコンのデジタルコンピュータに対して量子コンピュータという未来が研究されている。
量子コンピュータはトランジスタで0,1を表現する従来のコンピュータに対し、より多くの情報をもつ量子ビット(キュービット)により構成される。情報密度により超並列な演算能力が期待されているが、なかでも注目すべき特徴のひとつとして、shorのアルゴリズム:素因数分解問題の特性がある。ご存知のとおり今日デジタル情報のセキュリティに用いられる暗号の多くは「鍵」とその素因数分解を利用している。現時点で存在するいかなるコンピュータを用いても暗号を解除するのに100年かかる、とかそういうレベルなわけだが、量子コンピュータの出現は文字通りインターネットのセキュリティをブレークスルーしてしまうわけだ。
そんな量子コンピュータ実現の課題はいろいろあるけれど、大きくは原子の干渉性の問題。量子計算のためには大量の原子を同期した状態:コヒーレントな状態に保つ必要があり、これが難しい。実のところ最近の量子学でのいわゆるテレポーテーションの研究と量子コンピュータのそれは大きく重なっていたりする。テレポーテーション、すなわち瞬間移動の研究だ。量子の絡み合いによる量子テレポーテーションについては既に知られているところであるが、これに対し絡み合いのないテレポーテーション(古典テレポーテーションと呼ばれる)が実験室レベルでは観測の粋にある。それを実現する技術の一つが、いわゆるボース=アインシュタイン凝縮体(BEC)。全宇宙でもトップクラスの冷たい物質だ。BECは限りなく絶対零度であり、この状態ですべての原子は同期しコヒーレントな状態となる(量子学の不可思議な振る舞いが肉眼レベルの現象として観測できる・・・らしい)。原子の干渉性の排除の研究が量子コンピュータの実現には欠かせないというわけ。にしても10億分の1K(ケルビン)とは・・・想像もできない冷たさだ。
量子コンピュータがデスクトップサイズになる日を夢見て、頑張って長生きします♪