連載漫画パートカラー風妄想です。尖塔へと伸びる細長い石の回廊を逃げる二人の背後から、壁を壊しながら迫るベロキアのゴーレム。まるで、風の谷の城へと続く石橋が戦車で壊れたときのようなアクション、それと貴重な文化遺産が台無しだ。。。と、なぜか冷静に手を引かれて逃げる輪は思う。
「何処へ行こうというのかなぁ♪」
ゴーレムの背後から追いかけてくる少女、いや正確にはその少女の肩に乗りロボに指令を出す大作少年のようなアンティークドールが不敵に笑う。ああ、これなんだっけ、ああ、ラピュタだっけ・・・。
石の回廊を抜けた二人はひときわ高い尖塔の基部へと飛び込んだ。大聖堂とでもいうのだろうか。ゴシック様式の禍々しい建物の内側はステンドグラスから差し込む薄明かりに照らし出されている。すばやくあたりを見回したアルテラは何かを見つけたように聖堂の中心部に向った。そこに飛び込んでくるゴーレム。そしてベロキア。
「終点が大聖堂とは上出来じゃないの」
入り口をゴーレムにふさがれる形で、ベロキアが、いや正確にはその肩に・・・は、もういいか。
(ご主人さま、すこしだけ時間を稼いでください)
顔をよせるアルテラが耳元でささやく。うなづく輪。
「ま、まて!三分間だけ待ってくれ!」
「はぁ?なんでよ!?」
「い、いやあ、ほら!ひざまずいて命乞いをしたりとか、そんなのとか・・・」
「意味わかんないし。馬鹿じゃん?・・・ほらほら小僧、バベルの剣を渡してもらうよ」
汚いものを見るような視線ゴーレムと共に二人に迫ってくる。横目でアルテラのほうを見ると目を瞑りながらなにかを手にして呪文らしきコトノハを唱えていた。あれはこの間精霊から手に入れた鍵!?もう少し時間がかかりそうだ。
「ふっ、仕方ないな」
意を決したように、背中に担いだ剣を引き抜く。ワンハンドソードといっても大人が持っての話。ましてや日本人と欧州人との体格差もあいまって、大げさにいうとゴッド・ハンドと戦うあの人のようなシュルエットとになってる。その異様な気配に歩みをとめるベロキア。その剣は奪還指令を受けている古代バビロニアの聖剣に他ならない。詳しい情報を仕入れてはいないが唯の剣ということはあるまい。何千年のときを経てなお、その剣は今作られたかのような輝きを放っていた。しかし、それを手にする少年はどう贔屓目にみてもパンピー。なにを警戒する必要がある・・・。
「あらあら、いさましいわね。剣なんか構えちゃって、どうしようっていうのかしら」
「・・・ついにこいつの封印を解くときが来たか。おい、オマエ悪く思うなよ」
「な、何!?」
「ほああ〜」剣に手を当てて気を溜めるしぐさ。
(なんだこいつ?どうみてもパンピーです、ほんとうにありがとうございました〜って感じの癖に!なによなによ!?そういえば聖剣は確か封印されていたとか・・・ハッ、もしやこの小僧、聖剣の封印を。エクスカリバーを石から引き抜いた若き日のアーサー王とかそんなのッ!?そんなチート設定!?・・・)
ぐるぐると思考をめぐらせている間に聖堂の様子が激変する。いつの間にか、そこに鈍色の立方体が出現していた。あの、精霊使いの女の前に。くそッ!・・・あ、わたしとしたことがはしたない。今のはなしよ!
「ぬうう!女!何をしているのッ!?」
「もう、遅いわ!」
バースティスの鍵に呼応して出現した某聖闘士の荷物のような立方体から小さな角の形をしたペンダントを取り出すアルテラ、それに触れるやいなや魔力に満ちた光に包まれる。しかしその光は先ほどの精霊の加護とは異なっていた。同じくして悪魔のそれのような角が女の頭部に生えていた。
「こっ、コームッ!?・・・おまえ!」
慌ててゴーレムに指示を下すベロキア。何十トンもの巨大な石の塊のような二の腕が神速をもって雪崩のように二人の頭上に降り注ぐ。その刹那!
「人間風情が調子に乗ってるんじゃないのだぜ!?」
ゴーレムは光の線に貫かれ土くれへと帰す。その光の矢は聖堂の壁を貫き、遥か彼方の村の時計台を吹き飛ばした。(つづく)
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・ドラゴンブレス・・・ああ、これなんだっけ、ああ、ラピュタだっけ・・・。
・ベロキア・・・アンティークドールが本体のように見えるけど本体はロボ、じゃなくてベロキア。本人は無口で無表情キャラだが、心の中はこのアンティークドールのような性格。ゴーレムを操ったりしているところを見ると、無生物の操作に長けているのか。