ジャンルについての考察。きっかけは、「自分の創作はどのジャンルなのか」に始まり、「自分の好きなものってなんだろう」という問いに行きつく。
”創作には自分の好きなものを詰め込みたい”、そう思って改めて考えてみると、思ったよりその底は深かった。
SF、怪奇、幻想、ゴシック・・・。直感的にはゴシックなのかもしれないと思う。だが、現代においてはゴシックというジャンルは海外古典扱いだ。怪奇かな?
いや、そもそも怪奇、幻想、ゴシックの違いっいてなんだろう?考え出すと次々と分からないことが見つかり、言語認識の世界が崩れる。これまで結構雰囲気で用いていたのかと思うと、愕然とする。中世からある修道院の廃墟のような場所、歴史的な因果。あるいは綺麗とも可愛いとも違う、美意識・・・しかし、その理解は正しいのだろうか?
というわけで考察してみた。
<ゴシック創作の定義>
以下の四つの要素を含んだ創作物をゴシックと定義。
(1)空間:歴史的リアリティが物理的に凝縮された、逃げ場のない「場所」で描かれること。
・過去の重みに支配された空間。「いわく付きの物件」「放棄された原子力発電所」など。
(2)構図:本来なら封印されているべき抗えない力が顕現し、日常を侵食すること。力は崇高(時間空間的な重み)を含むこと。
・「過去の忌まわしい事件」「封印された悪魔」「帰還出来なくなった宇宙船」など。
(3)構造:人間が自分の意志(理性)でコントロールできない巨大な構造に組み込まれ、個が消失していくこと。消失は至高(前進)を含むこと。
・「霊の世界の存在を前になすすべもない」「宇宙的な暴力を前になすすべもない」「世界が実は計算機の中の仮想世界と知る」など。
(4)形式:ロアのような不確かな叙述という表層をまとっていること。
・「伝承」「事件の記録」「隠された記録」など。
これらの四つの要素に対する「好き」の要素は以下のように分析できる。
(1)はリミナルスペースのように(2)や(3)を高める効果がある。(重みは力学を、緻密さはリアリティを与える)
(2)に対して、崇高(「苦痛や危険を暗示する対象が、安全な距離から観察されるときに生じる、最も強い感情」)を感じること。(ゴシックの真髄)
(3)を見て恐怖と同時に価値観の更新による恍惚を得ること。(読者が新しい視点を獲得できるから)
(4)は(2)や(3)を高める効果がある。(虚実を定めない=神話化せず、鮮度を保つ)
※(1)(4)は形而下(表層)でWant、(2)(3)は形而上(真髄)でMust。
さらに個人的な「好み」を加味するなら、(2)の存在が(3)に対して対峙(抗い、あるいは契約による接続)する状況に、さらに崇高を感じる。
<他のジャンルとの違い>
・怪奇との違い:決定的には(2)(3)に含まれる崇高の比率が低いこと。「拒絶」の比率高め。
・幻想との違い:(1)は地続きの現実ではない事が多い、(2)は侵食ではなく裂け目からの溢れだし、(3)は越境であること。
こうして整理してみると、あらためて「好き」とゴシックが被っていることを認識できる。
さらに、表層を取り去り、(2)(3)を含む作品を探すことで、自分の「好み」そうなものを見つけることができる。これは使える!
書店などのジャンルは(1)(4)表層だけで分類されているが、(2)(3)の傾向を持つ作品は多く存在している。こうした傾向で検索することで、発掘が捗りそう。
ここに至り、作品のジャンルが見えてきた。
『ミレニアム・ゴシック』
20世紀と21世紀の境目を舞台とする、ポスト・ゴシック・・・レトロ・パンクよりも、より方向性が明確になったような気がします。