英國式魔法少女”ゴチック・アーキ”

%e7%b7%b4%e7%bf%92b274a2先月またグレートブリテンに行ってきました。

201610_01
ウェストミンスター寺院。ゴチックの特徴であるフライング・バットがキレイ!

3回目の今回はロンドンからちょっと足を延して近郊の町に行ってみようか、ということで事前にブリットレイルパスなるものを用意してみました。ブリットレイルパスは海外からの旅行者を対象とした英国内で鉄道が乗り放題になるというパスです。英国現地では買えず、旅行前に日本で購入していく必要があります(渡英一週間前ぐらいにパスの存在に気が付き、フライト12時間前にゲットしましたw)。
英国はいわずもがな鉄道発祥の地。英国の鉄道はロンドンを中心に放射状に発達しているので、どこへ行くにも便利だったりします。前回ボービントンやソウルズベリへ鉄道を使って敷居が下がった、というのもあるけど。

さて、19世紀から20世紀にかけて英国は世界史上最大の規模を持つ超大国を成していました。これの背景にあったのはいうまでもなく18世紀半ばからの産業革命であり、さらに遡ると市民革命←絶対王政←フューダリズムとなるわけですが、いい換えると富裕による社会進化、すなわち富(エネルギー)を集約しその力を使ってヒトの世界を改善してゆく流れといえるのではないでしょうか?そのエネルギーを超自然の”神”に注いだり(人心を制御するという効果が得られる)、社会システムの発展や超自然の解明すなわち科学技術の発展に注いだりしているわけです。

ブリテンは古くから欧州を覆う教会のシステムよりいち早く離脱し、神を制御する世界へ変革しました。この変革がオセロゲームのように世界をひっくり返し欧州世界は疲弊、結果として世界の頭脳はプリンストン高等研究所に集結し結実するのだけれどそれはまた別のお話。

千年魔道では13世紀から生き残った中世暗黒時代の遺産である魔法使いの少女がこういう世界でその背後にある存在と対峙するお話。そんな妄想を胸に抱きながら今回の旅行を振り返ってみます。

チェルシー薬草園(Chelsea Physic Garden)

201610_02 Chelsea Physic Garden(チェルシー薬草園)は1673年に設立され英國ではUniversity of Oxford Botanic Garden(オックスフォード大学植物園)に次ぐ二番目に古い植物園である。一部は湖岸工事や道路の拡張に伴い失われているものの今なおロンドンの中心部にある。薬草園とあるが、とどのつまりはその裏手にある王立病院に併設された研究施設であり、冒険者やプラントハンターが極東やアフリカなど全世界から集めた奇妙な植物を栽培し薬効を調べていた。
と、そこまで聞くと、Royalの名を冠して一般には世に出ていない夜にも奇怪な植物に関する知識・情報あるいはそのものを所有栽培し、その効能について日夜臨床実験を繰り返していた、などという想像がかき立てられる。近年までその施設は公開されていなかったが、現在は歴史的な場所ということで一般に公開されている。201610_04

高級住宅街としても知られるケンジントン&チェルシー王立区(ジェームス・ボンドの住所もチェルシーとされる)に位置するも高い壁に囲まれておりその存在を知るものも多くはない。まさに時に忘れ去られた”秘密の花園”といえよう。

201610_03
Swan Walk通り沿いにある入り口。見るからに園の入り口っぽいが施錠されていゆ。
201610_05
窓もなく通用口っぽい。施錠されててインターフォンが付いている。ちょっと敷居が高いですけど、ここから入れます。ベルを押すとガチャリと開鍵されました。

二年前に来た際には閉園日だったため見学できなかったけど、今回無事にリベンジ。最初入り口がわからず高い壁の周りを二周もしてしまった。Swan Walk通り沿いにある入り口には”開園日だけどこの入り口別ですよ(ここは閉ってまーす)”などと書かれており、Royal Hospital Road沿いにある扉から入れました。この扉従業員用の入り口にしか見えない(パスワード入力用のボタンがならんでます)し、窓もなく施錠されています。しかたなく呼び鈴を押してみると、ロックが解除されて中に入れました。英語がダメんな私にはハードル高。

201610_06
語りかけてくる植物たち。異国で不安な心を癒してくれる…

入り口を抜けるとそこにはロンドンの喧騒から切り離された別世界が広がっていた。まるでそこだけ時間の流れが違っているかのよう。英国式庭園みたいなのをイメージしてたがこれぞガーデニング!のように実に多種多様な植物がまるで植物図鑑を見開くように広がる。エリア別に区分けされハーブや薬草、高山植物や熱帯植物や水生植物などが所せまし。ガラスと木製の温室はレトロ古めかしくてスチームな時代を想起させるに足る代物だ。

この薬草園は17世紀後半に薬剤師名誉協会が薬草栽培のために設立したもので、のちに大英博物館の設立メンバでもある博物学者のハンス・スローンがその死後、王立協会に貸与し現在に至る。大英帝国の版図が拡大する中で名だたるプラントハンターが世界中から植物を収集しロンドンに集まった優秀な植物学者たちが研究や品種改良を行った。ロンドンで品種改良された世界最高級の綿花は植民地で栽培され、また富を生むことになる。
薬剤師名誉協会の創立メンバーだった王室主席植物学者ジョン・パーキンソンの著書『日のあたる楽園、地上の楽園』の表紙にはアダムとイブの暮らす楽園が描かれ、そこには伝説の植物バロメッサも見られるが、後世の植物魔術師たちは果たして伝説を現実に変えられたのだろうか…。
ハンス・スローンは現在残っている学会のなかで最も古い科学学会、ロイヤル・ソサエティ(王立協会)のメンバでもあった。得られた科学的知識を世界と共有しその発展を促す知的な組織が17世紀に誕生していたということか(日本は江戸時代の中期)。

園内にカフェ的なエリア(テント!?)もあるけれどこの日はお休みということで。しかしここはパンとお茶でも持参してのんびりと過ごすのに実にふさわしい場所。園内に毛がぼさぼさの猫がいてこれもなごむ。

オックスフォード―夢見る尖塔の都市―

201610_07ロンドンはパディントン駅から鉄道で一時間程度でオックスフォードに到着。英語圏最古の大学でもあるこの町は大学都市ともいえるべき町でいくつかの大学および大学付属施設からなる街といったほうがいいかも。まさにユニバーシティだ。オックスフォード大学という名前の大学は実際にはなく、この町での大学創立についての記録も曖昧で11世紀ぐらいから記録は残っている。講堂や学生寮、公園や博物館や図書館、英国最古の植物園や大聖堂までを有し居並ぶ街並みはまるで中世欧州の世界に迷い込んだかのごとし
かつてはトールキンやルイス・キャロルがこの地で妖精世界の妄想に夢を膨らませたのかと思うとついつい心震えてしまう。あとハリーポッターで見た風景もちらほらと。
アシュモレアン博物館からボドリアン図書館に向かう途中に殉教者記念碑があって(記念碑は見た感じ教会の尖塔のてっぺん部分のように見えるのだけれど、実はこれは地下教会の尖塔部分で地下に降りるとその秘密の聖堂に行ける、という詐欺話があるようだが、地下に下りる階段の先はトイレだったりする)、近くの路上に殉教者たちが処刑された場所が記されている。

201610_08
血まみれメアリーの所業あと。普通に歩いてると気が付かない。大量の自転車は学生たちの足。町全体が大学なのです。

7世紀ごろに教皇の命を受けた修道士が英国にカトリックを布教するのだが、16世紀、既婚のイングランド王がメイドに入れ込んだ結果、カトリックから離脱して帝國への道を歩み始めたわけだが、この後幾度がカトリックへの揺り戻しがあった。この処刑は、ブラッディ―メアリーがカトリックへの回帰を目論み、カトリックへ改宗しなかったイギリス国教会の司祭を処刑した場所らしい。

201610_09
ボドリアン図書館の施設の一部、ラドグリフ・カメラ。図書の閲覧室で地下で図書館とつながっている。学生のみが利用可能なので、基本的に観光客は入れない。

さてそのボドリアン図書館だが、歴史的経緯からいくつかの建物で構成されていてスクールズ・クアドラングルや五様式の塔、ラドクリフ・カメラなど特異な建築物群が興味深い。全く事前の予習をしてなかったのでどこから見たらよいのか途方に暮れているとジェントルマンがチケットカウンターを紹介してくれ、そこのお嬢さんが丁寧に説明してくれた。「日本から来られたんですね!」といきなり日本語でいろいろ説明してもらい助かる。
ゴシック様式のイギリス最古の図書館とされるボドリアン図書館(Bodleian Library)を無事に見学したのちメアリー教会の尖塔に上って町を見渡すとそこにはまさに中世の世界が広がっていた。夢見る尖塔の都市とはよく言ったものだなぁ。201610_13
尖塔の上まで登ると手に取る距離にガーゴイルの彫刻がある。昔からゴシック教会の尖塔頂上付近にあるガーゴイルの彫刻の写真を見るたびに、この写真はどうやってとったのだろう、と不思議だったのだが、あの複雑な尖塔には頂上まで登る階段が用意されているのだなと初めて気が付いた。201610_10

201610_11
クライストチャーチの食堂。要は学食。
201610_12
こちらはボドリアン図書館の一部。目を見張る細工に軽くめまいが…

クライストチャーチの中庭。うろうろしてると箒にまたがった魔法少女が上から降りてきて「ダメでしょ!無許可で学内に入ってきちゃあ」と怒られる。

201610_14ブラックウェルズ。入り口は普通の本屋さんなのだけれど地下のスペースがめっちゃ広い。なんでも大学の敷地の地下に伸びているのだとか。店員さんも優しくて親切だし、ここは何時間でも居たくなる本の都です。

続く。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください