英國式魔法少女”アブラハム・ダービー”

b081caエセルドレーダ皇女とオースティンの英國式薔薇”アブラハム・ダービー”。果実系の甘い香りはAloha譲り。皇女は幻影探偵ルビィとは旧知の仲でロンドンの幽霊事情にもお詳しい。

Chelsea Physic Garden(チェルシー薬草園)は1673年に設立され英國ではUniversity of Oxford Botanic Garden(オックスフォード大学植物園)に次ぐ二番目に古い植物園である。一部は湖岸工事や道路の拡張に伴い失われているものの今なおロンドンの中心部にある。薬草園とあるが、とどのつまりはその裏手にある王立病院に併設された研究施設であり、冒険者やプラントハンターが極東やアフリカなど全世界から集めた奇妙な植物を栽培し薬効を調べていた。
 と、そこまで聞くと、Royalの名を冠して一般には世に出ていない夜にも奇怪な植物に関する知識・情報あるいはそのものを所有栽培し、その効能について日夜臨床実験を繰り返していた、などという想像がかき立てられる。近年までその施設は公開されていなかったが、現在は歴史的な場所ということで一般に公開されている。

 高級住宅街としても知られるケンジントン&チェルシー王立区(ジェームス・ボンドの住所もチェルシーとされる)に位置するも高い壁に囲まれておりその存在を知るものも多くはない。まさに時に忘れ去られた”秘密の花園”といえよう。

この”秘密の花園”にアブラハム・ダービーがあるとは到底思えない(*1)が、この歴史的に”面白い”成り立ちを持ち、なおかつ今なお”生きている”施設である英國式庭園の中から奇妙な植物に囲まれることを夢みてのイギリス旅行だった…がしかし、チェルシー薬草園お休みのため見学できず・・・

というわけで今回の旅行を振り返ってみる。

普通に日記形式にするとものすごい量になりそうなので振り返って印象的な部分だけをまとめてみる。

洋上風力発電所”Thanet Offshore Wind Farm”

773ドーバー海峡の洋上に100基の風車がならんでいる様子は圧巻。最大発電量は300MWとか。バターシやその他の火力発電所跡地も幾つか見学したが、さすがに産業革命の国、それはもうものすごい迫力のある施設だった。とにかくデカイ!そしてよくあんなでっかいものをレンガで造るなーっていうの、関心する。
近年関心の高まっている再生エネルギー・・・英國はスケールも違うなー!

偉大なる七廟”Magnificent Seven”

ヴィクトリア時代に設計建設されたこの世のあの世、偉大なる七廟のひとつAbney。ロンドン市中にある最大のLNR Parkland Walkを経てここまでやってきた。
墓地というからもっとおどろおどろしい場所かと思ったが第一印象は街中にある公園といった感じ。なーんだちょっと拍子抜け・・・入り口の地図を見ると修道院を中心にして十字に道が伸びた楕円形をしている。とりあえず左回りでぐるり回ってみることにした。
IMG_1578_さすがに古い墓地だけあってヴィクトリア時代の墓石などは退廃的でため息が出るほど。しかも程よく荒れ果てている感がありまさに死に絶えた世界の姿といえよう。それでも最初は墓地外の喧騒も聞こえつつ、あれ、もう端っこなの?という感じで半周回ってしまった。端っこで新しいお墓でも作っているのであろうか、地面を掘る二人の姿があった。
なんだ、そんなに広くないんだ・・・一周してしまおうとその先に進む。しかしここからが妙だった。行けども行けども入り口にたどり着かない!端があの距離ならとっくに戻ってもいいはずなのに!?気がつくと外の喧騒も聞こえなくなり自分が蔦の絡みつく苔むした石版に囲まれた鬱蒼とする森の中にいることに気付く。

歩き続けでさすがに疲れてきたので仕方なくショートカットするため外周を離れて中央に向かう。しだいに墓地周囲の雑踏の気配も完全になくなり静謐な墓地のそれへと変わっていた。すごい!すごい雰囲気ある!
しかも、最初わりと狭い大きさだと思っていたのだがすごく広く、路も森の中に四方に伸びておりまるで迷路。やがて目の前が開けて、墓地の中央にある廃墟の修道院へとたどり着いた。この修道院は墓地のために最初から廃墟として設計されている。現在は危険なため立ち入り禁止になっていた。
さて、ここからいったん入り口まで戻って、反対側を回ろうか、とその方向に進むとやがて先ほどの地面を掘り続ける人影が見えてきた。方向感覚おかしくなってる?ではその反対側が入り口方向になるな、といったん修道院まで引き返しその反対の路を進んでゆく。
しかし行けどもいけどもお墓と森・・・あ、開けてきたぞ、とおもったらな、なんと修道院に戻ってしまった!?一体どうなってる!?じゃあその右側へ進んでみるか・・・ゆけどもゆけどもお墓と森、しかもあの首のない天使像さっきも見たような気がする・・・な、なにー?また修道院まで戻ってしまった!ならその逆へ行けば!?
・・・完全に方向を見失って迷子状態。特徴的なお墓もあるけど見たことあるような場所ばかり。しかも修道院は墓地の中心であり四方に伸びている道のどれかが入り口まで延びているはずなのに、どの道を行っても必ず修道院に戻ってしまう・・・。
どうしよう。どうしよう、このまま出られなくなったらどうしよう!日が暮れてきたらヤバイ!

他に墓地の中には散歩している(のかどうかよくわからないが人が歩いている)ので聞けばよかったのかも。しかし、どうもその人たちも胡乱な感じがしてこんな場所で対峙したくなくて。何度か堂々巡りを繰り返すうちに意を決して最初に修道院に入ってきた道に戻ってゆくと、しばらくしてようやく入り口にたどり着けた・・・一体どうなってるのこれ!?

思えばあのお墓を掘っていたポイントから来た道を戻れば戻れたわけなのだが…。あるいは気まぐれな幽霊さんのいたずらなのかもしれません。

Parkland
List of Local Nature Reserves in Greater London
Abney Park Cemetary

ボービントン戦車博物館

26の国のほぼ300台の車輛が展示されており、これは世界で最も広汎な戦車と戦闘車輛のコレクションである・・・とWikipediaにもあるとおり世界でも有数の戦車博物館が英国はWoolという田舎町にある。どれくらい田舎かというと列車が三両編成になって一時間に一本しか走ってなくて無人駅で駅前にもガソリンスタンドぐらいしかないくらい田舎である。ロンドンから特急列車で二時間ちっとと結構遠い。
IMG_1578_aしかし、AFVモデラーならば一度は実物を見ておきたいものだ。ということで戦車博物館に一日を費した(あとはアバディーン戦車博物館とクビンカぐらいに行っておけば戦車は満足できると思う)。
ここに保存されている戦車はどれも皆状態がよく稼動可能な大戦車両も現存している。おなじみのティーガーⅠ、Ⅱ(ポルシェ砲等)、ⅡをはじめマチルダⅡやその他主だった戦車の実物を目の当たりにできた。特にティーガー戦車は予想を上回る大きさでその迫力に感動した。(まあMM35でも二号戦車と歩兵セットを並べるとなんとなく想像はつく。しかしこの実物の迫力は筆舌に尽くし難い・・・)
展示の内容はいまさらなので特に触れないが一日中戦車実物に触りまくり500枚も写真を撮ってしまった。ここには修復(?)センターという戦車をレストアするガレージのものを載せておく。

なお、この訪問にはネットでの”ボービントン戦車博物館への行き方”や”イギリスの列車の乗り方”の情報がめっちゃ役に立った。何しろ英語は全然なので一人で異国を旅するのには何かと苦労した。

お礼の意味もこめて、そのうち自分の体験を元にした記事も書いておきたい。

ソウルズベリ大聖堂

IMG_2262英國最長の尖塔を持つ中世のゴチック大聖堂。メイド萌えの聖地でもあるのでこの地の訪問も外せない。ということで近所にあるストーンヘンジ観光も含めソウルズベリにも行って来た。こちらはロンドン中心から特急で一時間半とWoolの田舎町よりは便利な印象(3Gも市街では良好だった)。
古くて小さい街ながらもロンドンとはまた違った趣がある。大英図書館でも見たマグナカルタがここにもあったり、英國最古の機械時計があったり幽霊が出る建物などがあったりと見所満載の街である。
道中英國の地方の風景を沢山見たが自然が多くてのどかな場所が沢山。まさに中世物語に出てくるような場所ばかりで乱開発されたような場所はほとんど見当たりません。田園風景自体が人造の景色なので自然と表するのもちょっと変かもしれませんが、こんなところならUMAやUFO(幽霊飛行船)やミステリーサークルが出現してもちっとも不思議じゃないかも。

テムズバリア

IMG_2409ロンドンをテムズ川の洪水から守るための施設。バリアっていうのが具現化されてるところが英國式っていうか判りやすいというかなんかやることのスケールが気持ちいい。テムズ川の潮位は結構あってホテル近くのロンドンアイ付近で見てると満潮時はほとんど0メートルなんじゃないかと思うくらい(引いてるときは岸も現れるけど)。これで水かさが増して高潮になるとホントにロンドン水没するんじゃないかって思う。滞在中のTV番組でも水位上昇の危機に関するドキュメンタリーとかやってた。
 カナリーワーフあたりとかはかつてドックがあった場所を再開発したちょっとお洒落な町なんだけど運河が走っててこの辺も水面より地面がひくい。もう河に壁を立ててその壁の内側で暮らしているっていうイメージというかそのまんま。なのでこのテムズバリアっていう発想は至極当然かもね。
 テムズバリアパークという英國式庭園も散策。ただここは現在閉鎖されてて入れず。そういえば、ここもそうだけれどロンドンって廃墟がいっぱいある!ドックランズの再開発の光と影なのか。あちこち見て回るだけでもいろいろ刺激的なところ。テムズ川の下を歩けるテムズトンネルとかグリニッジ子午線とかも観光。

テムズバリア稼動模型

その他ロンドン

IMG_1578クレオパトラの針、大英図書館、Stポール大聖堂(必見)、ロンドン博物館、アビィロードスタジオ、バターシ公園、テンプル教会、コヴェントガーデンなど昨年いけなかった場所を網羅。しかし。まだまだ行ってないところが沢山。

英國そのものに古い古い人類の歴史があること(ブリテン島の先住民族やその後のドルイドやさらにその後ヨーロッパから来た民族含め)に加えて、かつて世界の中心と呼ばれ近代化に至るさまざまな知識や科学や産業・文化の発信源でありいろいろな意味で成熟した社会や価値観を持つロンドンは(日本に住むわたしから見て)未来世界そのものなのだと思う。中世や欧州のイメージそのままに近代化や世界中の文化がぶち込まれたスチームパンクの世界そのままみたいに。それこそが”また訪れたい!“と思わせる原動力なのかもしれない

アムステルダム

ヒースローから乗り換えのために立ち寄ったアムステルダムのスキポール空港でエンジントラブルのためキャンセルが発生。急遽アムステルダム(EU)に入国することになってしまう。一旦搭乗し飛行機の中で4時間も待たされてしまった。搭乗後エンジンの異常が見つかりその修理後飛び立とうとしていたのだからこちらも気が気ではない。キャンセルになってむしろよかった
1268しかし、アムステルダムに旅行する予定ではなかったのでまったく下調べしておらず大変な目にあった、といわざるを得ない。荷物は飛行機のままで文字通り着の身着のまま。バゲッジロスということもあるのだから今度から機内持ち込みするものをよく考えておくことにしよう。
英語が話せるわけでもないのにここはオランダ語圏。ということでアムステルダム駅前に宿を手配したまでは良いが、アムステルダム市の中心に移動するまでが大変。電車の乗り方や地理、表示板の見方などかなり怪しい。ホテルに着いたらついたでお互い片言英語でチェックイン。英語のガイドマップをもらってほっとするのはバルセロナのときに感じた安堵感に近い。

アムステルダムは(ロンドンに比べると)それほど大きな町でもなく観光の見所は一日もあれば見て回れる。トラムという路面電車が走っていてこれを便利に使えばちょっと離れているゴッホ美術館も含めて全体を見て回れそう。駅前に広がる市街は中世を思わせる古い町並みで運河の中にあってとても趣がある。
 最初は不安でいっぱいだったがなれてくると活気もあって町の人も気さくで楽しい街だった(とりあえずバルセロナのときのようなトラブルには巻き込まれなかった)。アンネ・フランクの隠れ家を訪れたのだけれど本で読んだあの隠れ家を実際に見るとは想像もしていなかった。本当に街のにぎやかな場所の一角で思わず大戦中のアムステルダム風景に想い耽る。
 ホテルもそうなのだが、この辺りの建物は面白い構造をしており別館とくっついてたりそれぞれのフロアの高さがまちまちで中二階みたいに立体的な構造を成している。隠れ家となっていた別館もそういうつくりを活用していた。

1297そういう戦時中の抑圧とは関係ないのだろうがこの国ではいろいろ自由で売春や麻薬(一部)も違法ではない。飾り窓といった遊郭やコーヒーショップといったドラッグのお店などが判りやすく点在していた。こういう風景もなかなかお目にかかれる光景ではないのではないか。

プリンスヘンドリック ホテル


という感じで8日間・・・もとい10日間欧州旅行を終える・・・ううういまだ時差ぼけ治らず・・・。


(*1)イングリッシュ・ローズのアブラハム・ダービーは1985年に誕生。このロゼッタ咲きの力強い薔薇はコークスを発明し産業革命の礎となった人物に奉じられた。

※大英博物館のショップで買ってしまった本(£10.99)。amazonのほうが安い?
Secret London - an Unusual Guide: An Unusual Guide

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください