概念伝達 -Concept transmission-
『蒼き鋼のアルペジオ Cadenza』を劇場で観た(DC観ていないが)。メンタルモデルや艦船が大スクリーンで動く様子はなかなか迫力があり画とてもキレイだったなーという印象が残る。
この劇中にはメンタルモデルが物理的な距離を無視し仮想空間で会話できるという概念伝達と呼ばれるシステムがある。概念伝達…なかなかかっちょいいではないか(厨二的に)。
概念。簡単なようで難しい言葉だけれど、知性が’何か’を抽象的に捉えた認識であり、例えば’犬’とは四足で歩く哺乳類でワンワン吼える、といった知性体が持つ認識の機能だ。
ヒトにはいくつかのコミュニケーションの形があるけれど、この概念の伝達には言語が前提にあると考える。情動(喜怒哀楽などの気持ち)などは表情や動作で言語を用いなくても伝達が可能だ。しかし、概念の伝達には同じプロトコルを確立する必要がある。ネットワークのレイヤーでいうとデータリンク層とアプリケーション層ぐらいの違いがある。絵やゼスチャーでも概念を伝達可能だが、これらは言語の一態だろう。
概念には例に挙げた’犬’のような現実に存在するものだけではなく、想像上の生き物のような架空のものもある。また、単に’物’だけではなく考え方や思想といったより高次な概念もあるだろう。これらは知的活動によって創造され、概念の伝達によって’生きながらえる’。知性体によって構成される想念上の上位層にある生命体のようなものかもしれない。今日人の社会を大きく分断している、さまざまな’神’という概念はその最たるものだろう。
もちろん、人がまだ非効率的な概念伝達手段しかもっていなかった原始の時代においても、人の中に死や自然に抱く畏怖を抽象化した概念として’神’を持っていたかもしれない。そうした人の数ほどもいたであろう神々が概念伝達の発達により淘汰を繰り返してきたことは歴史を紐解けば散見できる(「神は死んだ」という話からはさらにその先の世界もある)。
メンタルモデルは古風に表現すると人工知能。その人工知能同士が概念を伝達しあうという世界はなかなかメタ的で面白い。人工知能自体は簡単にコピーすることは可能だろう。経験や知識を共有することは瞬時にデータリンクできるかも知れない。しかし、概念、すなわち物事を認識する機能はデータより高次な機能であり知性を知性たら占める部分であり、単純なコピーは人格の上書きになる。そういう意味でアイデンティティを確立した人工知能がまず人間との概念伝達のためにメンタルモデルを生み出し、またメンタルモデル同士の概念伝達の手段をシステムとして持っている、という考え方はすごく面白い。
余談だが、情動伝達を概念伝達手段で行うと芸術的になる、ということにいまさら気付いた(絵画然り詩然り)。マトリクスで整理するとなにか新しい芸術が見えてくるかもしれません。
話は変わって変わって。
お休みが取れたので旅行に行ってきました。京都/広島/長崎/博多/神戸。まるで修学旅行ですね。
※「あらあら」戦艦陸奥の主砲とスクリュー(大和ミュージアム) 完全に艦これ巡礼ですねwもちろん大和ラムネ飲みました!
目玉は軍艦島上陸でしたが、大政奉還から文明開化、日本が急速に近代国家に向かって換わってゆくさまを実感できる旅行になってしまいました。
黒船が日本にやってきたころのアジアは欧米列強の植民地支配拡大におののき、その危機に立ち向かうために急速に近代化へ向かうも、その先は軍事衝突と敗戦、そして経済復興…。思えばお侍さんと町民の時代から80年足らずで世界最先端の技術水準で戦艦大和を建造してしまっているわけです。それはきっとすごい時代だったんでしょうね。
平日ということもあり『三菱長崎造船所』ではガイドのお姉さんが一緒に回って丁寧に説明してくださりました。船が大好きということで、武蔵のリベット器を一緒に抱えたり、今日はどの自衛艦が入港してますとか、ダイヤモンドプリンセス事件のときの話などで盛り上がりました。
※戦艦武蔵のリベット撃ち器。重くて一人では持てません。(三菱長崎造船所)
最近市内でオープンした『軍艦島ミュージアム』でも当時軍艦島で暮らしていた方が付きっきりで展示物をみながら当時の話を聞かせてくれてとても臨場感のある体験になりました。さすがに当時の軍艦島の生活写真を観ながら「あの人はね…」とか「このお医者さんがね…」などと話を聞かせてくれると素晴らしくリアルですよね。軍艦島のイメージがちょっと変わりました。
※戦艦土佐にシルエットが似ているとか。めちゃ天気よくて波も穏やかでした。上陸は感動しました。(端島)
さて近況ですが、前回マジックミサイルレースの話をしたから、というわけではないのだけれどお仕事で急遽ロスアンジェルスに行くことになってしまいました。ハリウッドの近くということで、どんなところなのかちょっぴり楽しみではあるけれど。