ブリティッシュ・リトル・リトル・ウイッチ
タワーブリッジ。
テムズ川にかかるゴシック様式のタワーは65m、千年魔道の世界では未だ蒸気の力ビクトリアエンジンが跳ね上げ橋を動かしており、スチームブリッジとも呼ばれている。
跳ね橋となっているのは、プール・オブ・ロンドン(ロンドン波止場)と呼ばれる港湾施設へ船舶が出入りするためだ。外国船舶がテムズ川に入れるのは深さ的にこの辺りまで。すぐそばにあるロンドン塔と並んで観光スポットの一つ、上流にあるロンドン橋と勘違いされることもある。
ロンドン波止場とその近隣繁華は20世紀の物流革命により衰退し速やかに荒廃し廃墟化が進んでいたが、再開発により近代化が進んでいる。世界有数の大都会だが都市型廃墟が数多く点在するのもロンドンの特徴だ。そんな廃墟の壁面に神出鬼没で出現するインスタレーションアートなんてのもあって面白い。
都市型廃墟と再開発には東京にも同じような状況は存在するけれど、欧州の石造りの古い建物は中身を入れ替えてずっと使い続けられるので、古色蒼然とした中世からの歴史風情を残しつつっていうところが根本的に違うところ。
千年魔道の世界ではプール・オブ・ロンドンには未だに各国からの大型船が犇きあい、ロンドン橋も橋上に住居や教会が立ち並ぶ中世からの姿を残している。橋の上に町が建っているという姿は構造的にも面白く、たとえば立体的に区画された堰に水車が配されテムズ川の潮汐力によって生み出される動力がバベッジの階差機械を駆動するとか、教会の司教座に機械式聖堂が鎮座するとか妄想のネタには事欠かない。廃墟に忽然と現われるアートなどは、謎の魔法陣とか紋章が刻まれてそれが引き起こす魔法的な差障りによる事件を颯爽と解決する我らが幻影探偵ルビィ、とかそういう物語を喚起させる。
往年のロンドン波止場に並ぶ世界各国の船の群れはその上を渡り歩けば向こう岸に渡れるといわれるほどに数多く、船荷を盗み出してはそれを売り捌いて生計を立てる盗人家業も成り立つほどに賑わっていたと聞く。さぞかし賑やかでエキサイティングでエキゾチックな情景だったに違いない。ロンドンは知れば知るほどに魅力的な場所だと思う。
英國といえばマイケル・ムアコックのエルリックシリーズに登場する(エルフ族のような)長命で叡智に長けた、がしかし斜陽の国メルニボネの<夢見る都>イムルイル。あの都は英國をイメージしたものだと最近気が付くようになった。あまり本を読まない私だが、ムアコックのはそれなりに読んでいたりする。無論天野さんの美麗な挿絵に惹かれたクチなのだけれど(がしかし一番好きなのは東京創元社のホークムーンシリーズ(旧版)だったりするのだけれど)。話がそれた!…子供の頃はわからなかったけれど、ムアコックも英国の作家、かつて七つの海を支配した大英帝国が栄華翳り、その様をかつて魔法と竜の武力で世界を支配したメルニボネに重ねていたのかと思うと一層感慨深い。しかし、実際に見て感じた今日の英國は衰退する一途をたどるかつての高度文明だった帝國、とはちょっと違った未来をたどりはじめたようには思った。帝國は姿かたちを変えて世界の覇権に関わり続けている…のではないだろうか。
話は変わって変わって。
リトルウイッチアカデミアの劇場版が10月に公開されるというこうとでアニメミライのリトルウイッチアカデミアBDを買って見た。尺は25分と短いけれどこの作品をはじめてみたとき涙してしまった。この作品、見るたびに涙してしまう。アッコがラストでドラゴンに矢を射るシーン、いつもここで涙。感動的なストーリー…というわけではないと思うし(といっても”信じ続けるものだけがその扉を開く”という王道は大好き!)悲しいお話でもないが、しかしどうしてもこのシーンで涙してしまう…。不思議…とにかくこの作品はとりわけ心が躍るのだった。…そして映像特典を見たときにその理由がわかった。お話や音楽だけでなく、絵の動きが心を揺さぶっている…どうもそういうことだった。
アニメの世界ではデジタル全盛の現在にあっても紙に手で絵を描いているらしい。そういえば、かれこれ何年もアナログで絵を描いていない。久しぶりに描いてみたが、描いている絵が指先で隠れてしまい(当たり前だけどw)全体が見えない。指先を見ないで描くことに慣れてしまったが、紙の上に絵を描くという楽しさを少し思い出した。
たまには描くか、黒歴史ノート…。