ブーツ&サドルズ

AH-64D アパッチ・ロングボウ運動の基本は円運動だ。

放り投げた物体が描く放物線はいうに及ばずミツバチダンスや通勤通学の往復運動でさえひしゃげた円弧といえるし分子運動や果ては天体の運動さえも円弧を描く。
そんな風に考えたらこの世のあらゆるものは回転したくてしたくてたまらんのではないかー!?とさえ思える。こうした根源的な衝動を「回転欲」と呼ぶことにする。

物理的な視点はいうに及ばず心理的、精神的な挙動はどうだろう?進路や欲しいもので迷ったり異性に対する悩みで堂々巡りを感じたことはないだろうか、また好きな音楽やキャッチコピーのフレーズが頭の中でぐるぐるループするといった経験はないだろうか、これらはみな「回転欲」の成せる御技なのだ。

弧の運動には進行する経路方向に対する垂直な重力成分の存在がある。これは向心力と呼ばれており弧運動の場合経路の瞬間的な接触円の中心を向いている。この向心力の中心が常にぶれない状態が真円回転といえる。「回転欲」について考えるとき、いつもカフカの『城』という物語を思い出す。測量技師として村にやってきたKがそこにある神秘的な’城’に近付こうとするがどうしてもそこにたどり着けない…といったあらすじが有名だ。この’城’=中心を目指してしかし永遠にその場所にたどり着けないという不条理感はこの「回転欲」にも当てはまるのではないだろうか。

向心力とはよく言ったもので、人間が人生という回転運動を営むなかでその日々の経路=ベクトルとは別にその瞬間瞬間では自身の理とする想い=心に向かっているものの、決してその場所にはたどり着けず、理想とするその中心に向かって延々と回転運動を繰り返す日常を想起させる。常に向き合いながら決して到達できない場所、それが’心’なのだ。回転する力は生命の力そのものであり、完全な回転すなわち円というシンボルは古代より生命や完全な力、永遠を意味する意匠としてさまざまな信仰に取り込まれている。

ワイルドファンシーゲイト…南洋上空に突如出現した世界の”歪”はそう呼称された。ゲイトを通じて顕現する”現象脅威“にさらられた人類は謎の敵性との戦闘状態に突入。その圧倒的な戦力差を前に一時戦況は絶望的なものとなったがビキニ環礁に墜落した敵性の兵器を入手し人類は初めて彼ら対抗しうる兵器の開発に至る。コンスタンティノポリス公会議の結論、その人類が世界のあり方に対する危機に対抗しうる唯一の武器…それが「回転欲」だった。そして回転欲を顕現する兵器が開発される。108のケミカルプロセッサ回転体を備えプラズマテスラタービンでスーパークルーズしボロンで論理装甲されたそれは思考戦車’レイゾンデートル’と呼ばれ、そのパイロットとしてアーデルハイド症候群と呼ばれる高機能精神自閉を持つ子供達がゲイトの近海に位置する南の島に集められる。自転車で一周できてしまうような小さな島に最先端の軍事基地と子供達のための’普通の町’が犇き’空襲警報’とともに出撃する少女は今日もその「回転欲」を胸に’冷蔵庫マザー’や心の闇と対峙する…、という妄想。

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