赤兎馬
“80年代後半から90年代前半にかけて日本は空前のバイクブームに包まれていた。それはツーリングを楽しむといったのんびりしたものではなく、サーキットさながらに膝を擦りながら山の峠道を攻めるといったもので、市販されるバイクもレーサーに保安部品を付けただけのような”レーサーレプリカ”が一番の人気を誇っていた。”というMG誌今月号のNSR作成記事に胸を打たれ、当時の世界に思いを馳せながら生足ライダーを描いてみた。
当時私もご他聞にもれずもれなく二輪に嵌っていた訳だがバンクセンサーから火花を散らすほど過激に走り込む度胸もないので峠ではもっぱらギャラリーだった。このNSRは本当にこんな姿でよく見かけたものだ(ちなみに私はVFRに跨ってた)。
あのころはおそらく日本全国どこでもそんな状況だったのだろうけど、私達の住んでいるエリアにも走り屋が集まる峠道というのがあった。人気も交通量も少ない曲がりくねった海沿いの山道で途中に見晴らしのいい駐車エリアが点在していて休みの日になると見知った顔が集まってくる。そんなコミにティな場所だから当然有名人もいたりする。すごく上手なVFRを駆る人がおり人知れず皆彼を”キング”と呼んだりしていた。
そんなキングもある日峠で事故って姿を見せなくなってしまった。聞いた話によると直線でいきなり道端から雉が飛び出してきてよけるまもなくそのまま激突してしまったという。あの”キング”も畜生には勝てなかったのか。ちなみに不幸にも”キング”に轢かれてしまった雉はそのまま絶命してしまったのだけれどその夜にその雉をわざわざ採りに行って食べた奴がいるらしい(不幸な雉は他のライダー達によって道そばに埋められていたのだがわざわざ掘り起こしたらしい)…てゆーかそれは私の知人だったりした。
峠に現れる幽霊ライダーなんていう話もあって、決まって金曜の夜一人で峠を走っているときに突如後ろから現れて抜き去ってしまう真っ黒なバイク、そしてそのあと少しだけゆっくり前を走るのだけれど、決してその黒いバイクを抜いてはいけない、そうしないと必ずその直後事故ってしまう、なんていわれていた。そのバイクはVFRっぽかったので「あれってさ、”キング”の幽霊なんじゃないか?」なんて噂も。(注:”キング”は死んでません) …雉の呪い、という説もあります。
今思うと仲間内でのバイクの事故率は異常に高く、見知っているバイク乗りの半分以上は必ず事故で骨を折っていた。朝講堂に膝から血を流しながら現れてそのまま授業を受けてた先輩もいたが、アレはさすがに引く。
意味もなくチームを作ったりしてお揃いのステッカーなんかを自作してツーリングに出かけるのも楽しい。みんなでトランシーバーを買ってヘルメットに仕込み話しながらのツーリングというのも懐かしい。
対向車線のバイクに二つ指でサインするのも初めては感動したっけ。今もあるのかな。
関係ないけど8月過ぎるの早すぎ…orz